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2020年のMETAFIVE評。その足跡と『環境と心理』で迎えた新局面

2020年のMETAFIVE評。その足跡と『環境と心理』で迎えた新局面

METAFIVE『環境と心理』
編集
山元翔一(CINRA.NET編集部)

「4年ぶりの再起動、最新形態のMETAFIVEが『環境と心理』で見せた新局面。詞曲を手がけた小山田圭吾に着目して紐解く」テキスト:金子厚武

本来ならば『東京五輪』が華々しく開幕しているはずだった2020年7月24日、METAFIVEが4年ぶりに再起動し、新曲“環境と心理”を発表した。小山田圭吾が作詞・作曲を手がけ、曲調はメロウなニューウェイブポップ。1番では小山田がMETAFIVEで初めてリードボーカルを担当し、2番をLEO今井が、3番を高橋幸宏が歌い継ぐ。初の日本語タイトルも含め、2020年仕様のMETAFIVEを提示する1曲だと言っていいだろう。

METAFIVE“環境と心理”を聴く(Apple Musicはこちら

少し振り返ってみると、2016年1月に発表された1stアルバム『META』は、「一人2曲ずつ持ち寄る」という決まりが設けられ、小山田はまだ「高橋幸宏&METAFIVE」名義だった頃に初めて6人で作られた“Split Spirit”と、アルバムのオープニングを飾った“Don't Move”を提供。もともとライブのために集められたメンバーだったこともあり、砂原良徳の「体が動くようなもの」という発言を意識して作られた“Don't Move”は、変拍子を用いつつもファンキーなサウンドが特徴で、点で配置された音がグルーヴを生み出すアレンジからも小山田らしさが強く感じられた。

METAFIVE“Don't Move”を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

しかし、メールでデータを回しながら、各自が音を足したり削ったりすることで磨き上げられていく楽曲は、それぞれがプロデューサーであり、トラックメーカーであり、プレイヤーでもある6人だからこそ生まれるもの。“Don't Move”も小山田による骨格のみのデモに、高橋のドラムソロや、砂原によるオーケストラルヒット、YMOのオマージュなどが加わることでメタモルフォーゼが起きていたし、メロディーと歌詞はLEO今井とTOWA TEIが担当していて、クレジットには小山田とともに2人の名前も並んでいた。

10か月後に発表された『METAHALF』には、楽曲に対する個々の関わり方の自由度がより高まった5曲を収録。小山田の提供した“Chemical”(作詞:小山田圭吾、LEO今井、砂原良徳 / 作曲:小山田圭吾、LEO今井)はほぼワンコードで押し切るクラウトロック風の仕上がりで、シンセベースではなくエレキベースを用いたより攻撃的な仕上がりだったが、この曲もメロディーはLEO今井が担当し、砂原によるシンセソロや、TEIが加えた水の音などをフィーチャーすることで、METAFIVEならではの独自性が生まれていた。

METAFIVE“Chemical”を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

それから4年の間でメンバーはそれぞれソロワークを展開し、TOWA TEIの『EMO』(2017年)や、高橋と鈴木慶一によるTHE BEATNIKSの『EXITENTIALIST A XIE XIE』(2018年)、Corneliusの『デザインあ 3』(2018年)などでMETAFIVEからメンバー数人が集まる機会などがありつつ、それぞれがそのなかで得た経験を持ち寄り、新たな化学反応を見せるのが現在のMETAFIVEだと言える。そして、“環境と心理”が作詞・作曲に小山田のみがクレジットされた初めての曲であることを考えれば、あくまで6分の1であることは前提としながら、この曲からは「『Mellow Waves』以降」の小山田を感じることができる(関連記事:Cornelius『Mellow Waves』インタビュー)。

そもそも『Mellow Waves』という作品は、作家仕事との差別化を図る意味合いもあって、結果的に自身の歌にフォーカスした作品となり、そのメロウなムードはフィジカルなMETAFIVEからの反動でもあったことだろう。

Cornelius“夢の中で”を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

今回小山田がリードボーカルを担当しているのは、この延長線にあると考えられるだろうし、「体が動くようなもの」という以前のコンセンサスが一度チャラになったと推察される“環境と心理”は、ビートを効かせつつも、『META』と『Mellow Waves』の中間のようなテンション感と捉えることもできる。過去作に倣えば、本作もミックスはCorneliusの作品でもおなじみの高山徹が担当しているはずで、イントロで鳴る音のリヴァーブ感からして、点でグルーヴを紡いだ過去曲とは違い、さざ波のような線と面で構築された『Mellow Waves』の音像に近いものが感じられる。

それでもやはり、“環境と心理”はCorneliusの作品とは異なる、METAFIVEだからこそ生み出すことのできる楽曲である。全体に漂うニューウェイブ感はあくまでこの6人ならではのものだし、LEO今井と高橋のボーカル、ゴンドウトモヒコによるフリューゲルホルンはもちろん、ビブラートの効いたシンセサウンドは砂原のシグネチャーで、ラストのサンプリングをはじめとした遊び心はテイの要素が強いと考えられる。

METAFIVE“環境と心理”を聴く(Apple Musicはこちら

日本語詞にしても、少ない言葉数で効果的に聴かせる手法はCornelius作品における坂本慎太郎からの影響も感じさせつつ、せつない心境を風景描写で表現する手法はむしろ高橋幸宏的で、<なんとなく気分が ちょっとだけ晴れてく>というフレーズに象徴される「出口主義」(<出口なし、袋小路なんです>と複雑で閉塞的な社会から抜け出したい願望を歌ったTHE BEATNIKSのファーストシングル“No Way Out”が代表的)もやはり高橋幸宏的。出口の見えないメロウな日々が続く現代に、ほのかな明かりを灯してくれる。

“環境と心理”1曲を聴く限りでは、『METAHALF』以降の小山田の作風の変化を感じずにはいられないが、今後他のメンバーが主軸となって作られた楽曲が出てくることで、それぞれの4年間が色濃く反映された、新たなMETAFIVEを感じることができるはず。ただ、楽曲によっては「あくまで6分の1」というメンバーバランスも一旦置いておいて、誰かが2分の1を担う曲があってもいいだろうし、『METAHALF』の時点でその萌芽が見えていたことを思えば、“環境と心理”をバンドのメタモルフォーゼの過程を捉えた1曲だと見ることも可能かもしれない。ますますフリーフォームになっていくであろう、今後のMETAFIVEが楽しみだ。

METAFIVE『環境と心理』ジャケット
METAFIVE『環境と心理』ジャケット(音源を聴く
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リリース情報

METAFIVE『環境と心理』
METAFIVE
『環境と心理』

2020年7月24日(金)配信

プロフィール

METAFIVE
METAFIVE(めたふぁいぶ)

高橋幸宏×小山田圭吾×砂原良徳×TOWA TEI×ゴンドウトモヒコ×LEO今井。それぞれが日本の音楽シーンに特別で、独特な存在を築いてきたレジェンドの集合体である、まさに夢のバンド。2014年1月に六本木EX THEATERのオープニング企画として行われた、「高橋幸宏&METAFIVE」としての一夜限りのスーパー企画として結成され、その後不定期に活動を続行。2016年1月にオリジナルアルバム『META』をリリース。同年8月には、アルバム発売直後に行われたEXシアター六本木でのライヴを全曲完全映像化した作品『METALIVE』を、11月にはオリジナル曲5曲を収録したミニアルバム『METAHALF』を発売。2020年7月、約4年ぶりとなる新曲『環境と心理』をリリースした。

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