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あの人の音楽が生まれる部屋

自身の身に起きた出来事を素直に綴りつつも遊び心満載な歌詞世界と、プロデューサーWTF!?と共同制作による中毒的なトラック、その化学反応が引き出すユニークなサウンドを、キュートでハスキーな歌声で軽やかに(ときに切なく)歌うアーティストBOMIさんが、1年7か月ぶりとなる2ndアルバム『BORN IN THE U.S.A.』を完成させました。ぶっ飛んだパーティーチューンから切ないラブソング、疾走感あふれるロックまで詰め込んだ本作は、彼女にとって集大成であり、新たな出発を告げる作品でもあります。本作に辿り着くまでには、様々な試行錯誤や葛藤を乗り越えてきたという彼女。それは一体、どのようなものだったのでしょうか。都心にある彼女の自宅に潜入し、「表現」に対する思いの丈を大いに語ってもらいました。

テキスト:黒田隆憲 撮影:豊島望

BOMI

BOMI(ぼーみ)

2011年、新鋭プロデューサー・WTF!?と出会い、bomi始動。2012年6月、ミニアルバム『キーゼルバッファ』でメジャーデビュー。芯の通った繊細な歌声と、緻密に積み上げた洋楽ライクなトラック、都会に生きる女の子の日常を鋭角に切り取るリリックが注目される。これまでにフルアルバム1枚、ミニアルバム3枚、EP盤を1枚リリースしている。近年の活動は音楽だけにとどまらず、CM、モデル、雑誌連載など多岐にわたる。2015年1月21日に、約1年7ヶ月ぶりとなるニューアルバム『BORN IN THE U.S.A.』をリリース予定。

http://bomibomi.com/

「違う世界へ行きたい」
幼い頃から養っていた想像力と創造力

BOMIの部屋

ニューヨーク生まれのBOMIさんは、3歳のときに親元を離れ、大阪で育ちました。幼い頃は「一人遊び」が大好きで、使っていないニワトリ小屋にブロックを積んで「秘密基地」を作ったり、発泡スチロールで氷山に見立てた山を作って折り紙のペンギンで遊んだりしていたそうです。

BOMI:私の育ての親は、いわゆる「昭和」な人で、厳しい家庭でした。欲しかった「シルバニアファミリー」も買ってもらえなくて、でもなぜか裸のリカちゃん人形だけは家にあったんですよね。だから、よくリカちゃんに服を作ってあげたり、髪を切ってあげたり、あとはダンボールで家を作ったりして遊んでました。その頃テレビで放送していたドラマ『金田一少年の事件簿』に、「放課後の魔術師」っていう架空の人物が出てきたんですけど、そのキャラクターに憧れて「昨日、学校のプレイルームで放課後の魔術師を見たよ!」ってクラスメイトに嘘をついちゃって(笑)。みんながそれを信じちゃって、気まずくなったことを覚えてます。今自分がいる世界じゃないところへ行きたいって、ずっと思っていたんですよね。

物心がついたときには歌うことが大好きでしたが、「音楽に囲まれたクリエイティブな環境」とはほど遠く、家ではテレビがいつでも流れ、BOMIさん自身もNHKの演歌番組や『歌謡コンサート』を見ていたそうです。

BOMI:小学3年生のときに、大阪の天満っていう、それまで住んでいた田舎よりはちょっと中心街に引っ越して、そこで初めてポップスに出会いました。当時、同級生たちと「SMAPの中で誰が好き?」という話題になり、それまでSMAPを知らなかった私は、慌ててCDを買いに近所のダイエーまで走りました。その頃から、自発的に自分の好きな音楽を聴くようになりましたね。SPEEDに憧れて「メンバーになりたい!」と思って、近所の公園でダンスを練習したりして。そして、友達とカラオケに行くようになって、「歌うまいね」なんて言われると、やっぱり調子に乗るじゃないですか(笑)。それで徐々に、「歌を歌って生きていけたらいいな」と思うようになったんです。でも、「音楽が自分をどこかに連れて行ってくれるかもしれない」と思うようになったのは、もっと後のこと。

2畳の防音室にこもって
音楽制作に没頭した上京直後の日々

BOMI

中学の頃はマライア・キャリーやクリスティーナ・アギレラ、Destiny’s Child、TLCなど、R&B色の強いものを聴いていたBOMIさんが、オリジナル曲を作るようになったのは高校生のとき。小さい頃からピアノを習ってはいたものの、コード進行すらわからず、鼻歌で作ったメロディーに2音で和音を重ねるなどしていました。そして、大学入学とともに上京したBOMIさんは、本格的に音楽へとのめり込んでいきます。

BOMI:Macと電子ピアノを購入して、GarageBandで宅録を始めました。大学に通っていたんですけど、どうにも『オレンジデイズ』みたいな学生生活になじめなくて(笑)。辞めようかなと悩んでいた頃だったので、考え方も尖ってて鬱屈がたまる一方。どんな風に人と向き合えばいいのかもわからなくなってきて、人間関係が面倒くさくなってしまって。とりあえず1年休学することにしました。その後は、時間がたっぷりできたので、8畳の部屋に2畳の防音室を入れてひたすら打ち込みをやっていました。当時鉄骨のワンルームマンションに住んでいたんですけど、壁が薄くて隣の人が鼻をかむ音まで聞こえるようなところだったんですよね。防音室は真っ暗だし、夏は暑くてたまらなかったですが、そのときに少しは曲作りのことがわかるようになったのかな。御徒町凧さん(おかちまち かいと。詩人、作詞家。BOMIの一部の楽曲を作詞共作している他、森山直太朗なども手がける)と出会ったのも、その頃でした。当時、父親が東京に住んでいて、私が「音楽をやりたくてオーディションを受けている」と話をしたところ、「知り合いで音楽をやっている人がいるから紹介する」って言うんですよ。でも、なんだか胡散臭いじゃないですか、「父親が紹介する音楽やっている人」なんて(笑)。

半信半疑の出来事から発展
自分の音楽性を一変させたWTF!?との出会い

BOMIの部屋

半信半疑で渡したデモテープが、回り回って御徒町さんのもとに届き、一緒に楽曲を作るようになります。詩人でもある御徒町さんの書いた歌詞に曲をつけるというスタイルは、BOMIさんにとっては思いの外新鮮だったそう。物語性のある歌詞への憧れが強くなり、「この言葉をよりよく響かせるのに必要なメロディーは何だろう?」ということを、突き詰めて考えるようになっていきました。

BOMI:その頃は、今とは違う名義で活動をしていました。今自分がやっているような海外のインディーロックっぽいサウンドに興味を持つようになったのは、共同プロデューサーのWTF!?に出会ったのが大きいです。当時自分が考えるロックは、Red Hot Chili Peppersとかそういうマッチョで怖いイメージがあったんですけど(笑)、WTF!?にCSS(ブラジル出身のインディーロックバンド)を教えてもらったときに「これもロックなんだ!」ってびっくりしました。そこから、曲の作り方も聴き方も変わっていきましたね。それまでは、まずメロディーを作ってからコードをあてはめる作り方をしていたんですけど、WTF!?の作る曲はギターやシンセのリフが中心にあって、一つひとつの楽器の音色作りにもすごくこだわっている。それを見ているうちに、「自分の声も楽器の一部みたいにして曲を作ったら、どんなふうになるのかな?」って興味が湧きました。だから、歌詞もなるべく意味のないことを歌うようにして。別名義で活動していた頃は、自分の悲しみをわりとストレートに曲にしていたんですけど、重たい歌詞にも飽きてきていて、それまでの路線からは極端に振り切りましたね。

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