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自殺はいつもネガティブか?岡田利規と太田信吾が「才能」を語る

自殺はいつもネガティブか?岡田利規と太田信吾が「才能」を語る

インタビュー・テキスト
小林英治
撮影:豊島望
2014/08/11
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ドキュメンタリー映画『わたしたちに許された特別な時間の終わり』は、駆け出しの映画監督が、プロのミュージシャンとしての夢を追い続けていた友人の自殺と真正面から向かい合い、7年間をかけて完成した作品だ。この映画では、友人の生前に撮影していた日常生活や、彼を慕う後輩との音楽活動をとらえたドキュメンタリー映像と、その後に撮影されたフィクションのパート、さらに映画撮影現場のドキュメントシーンとが複雑に絡み合う。

監督の太田信吾は、岡田利規が主宰するチェルフィッチュの舞台に参加するなど、俳優としての顔ももち、監督するこの作品のフィクション部分では自ら出演もしている。普段は演出家として俳優・太田信吾に接している岡田利規は、彼の映画をどのように観たのか。二人による初めての対談が実現した。

太田くんの演技は映画的でもあるんだけど、映画も舞台もどっちもこなす器用な人というのではなく、ひとつの演技がどちらでも通じるオールインワンみたいな感じ(笑)。(岡田)

―太田さんは俳優としてチェルフィッチュの舞台にも出られていますが、そのきっかけを教えていただけますか?

太田:初めて観たチェルフィッチュの『フリータイム』(2008年)という舞台がすごく面白かったんです。そしたら大学の卒業式の翌週に公演が予定されていた『三月の5日間』の海外公演ツアー用の役者オーディションがあって、俳優に興味があったので、応募したのがきっかけですね。

―太田さんは大学では映画を撮ってたんですよね? なぜ役者になろうと思ったんですか?

太田:演技に興味があったし、大学も卒業するしどうしようと思ってた時期だったんです。あと、大学の宮沢章夫さん(遊園地再生事業団主宰)の授業で戯曲を読んでいたんですけど、そこで『三月の5日間』の戯曲を全員買わされたんですよ。

岡田:えっ、買わされたんだ。すごい、宮沢さんありがとう(笑)。

太田:それまでの授業では、チェーホフとか古典的なのをやっていたんですが、チェルフィッチュをきっかけに現代的なものに出会って、そこからいろいろ芝居を観に行くようになって。

右:太田信吾
右:太田信吾

―演技の経験はあったんですか?

太田:松井周さん(劇団・サンプル主宰)の授業で、ちょっとエチュード(状況や場面、人物の性格だけを設定して行う即興劇)的なことをやっていて、そこで演技の感覚を覚えましたね。

―それでオーディションを受けに行って、岡田さんが採用したと。

岡田:ええ。すごく単純に、彼は面白かったので。僕がイメージする世界観を面白く伝えられる役者のことはもちろんいいなと思うんですけど、太田くんの場合は、その要求をクリアしながら、独自の演技の基準を持っていて、そこを必ずくぐらせてやってる感じがあったんです。その基準が僕には何だか分からないんだけど、謎ってすごく惹かれるものなので、見た瞬間に「あ、彼は、唾つけておいたほうが良いな」と(笑)。

岡田利規
岡田利規

―それは、太田さんが映画をやっていることと関係があるのでしょうか?

岡田:彼の演技は映画的でもあるんだけど、映画も舞台もどっちもこなす器用な人というのではなく、ひとつの演技がどちらでも通じるオールインワンみたいな感じ(笑)。そういう人はあんまりいないなと思いますよね。

―それ以降、最新作も含めて太田さんはチェルフィッチュの作品に出演されるようになったわけですが、『わたしたちに許された特別な時間の終わり』を太田さんが撮ってることを岡田さんはご存知でしたか?

岡田:知ってました。去年のある日、突然太田くんが「編集が終わったー!」ってすごく興奮して連絡くれて、「おごりますから飲みに行きましょう!」って。「じゃあ行く!」って言って、焼き肉をごちそうになりました(笑)。

太田:今回、岡田さんの小説集のタイトル(『わたしたちに許された特別な時間の終わり』)をお借りすることもあって、事前にお話はしていたんです。自分で他のタイトルも考えてみたんですけど、この言葉が映画の内容をすごく言い当てられてるような感じがしたので、これ以外にないだろうと思って。

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イベント情報

『東京アートミーティング(第5回) 新たな系譜学をもとめて 跳躍/痕跡/身体』

2014年9月27日(土)~2015年1月4日(日)
会場:東京都 清澄白河 東京都現代美術館 企画展示室1F、地下2F・アトリウム
休館日:月曜(10月13日、11月3日、11月24日は開館)、10月14日、11月4日、11月25日、12月28日~1月1日)
料金:一般1,200円 大学生・65歳以上900円 中高生600円

※チェルフィッチュとして出展、太田信吾も参加

『スーパープレミアムソフトWバニラリッチ』

2014年12月12日(金)~12月21日(日)
会場:KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
作・演出:岡田利規
出演:
矢沢誠
足立智充
上村梓
鷲尾英彰
渕野修平
太田信吾
川﨑麻里子

作品情報

『わたしたちに許された特別な時間の終わり』

2014年8月16日(土)からポレポレ東中野ほか全国順次公開
監督・脚本・撮影・編集:太田信吾
音楽:青葉市子
出演:
増田壮太
冨永蔵人
太田信吾
平泉佑真
有田易弘
井出上誠
坂東邦明
吾妻ひでお
安彦講平
ほか
配給:ノンデライコ

リリース情報

増田壮太<br>
『いのちのドアをノックする』(CD)
増田壮太
『いのちのドアをノックする』(CD)

2014年8月6日(水)発売
価格:2,160円(税込)

1. ミキサー、そして沈殿 俺待ち
2. 平成
3. 田端
4. 雨、雨、雨
5. 川の中
6. ロッキン'
7. 僕らはシークレット
8. 空色
9. 僕が修学旅行に行けなかった理由
10. ゴッド&ブッダ
11. 落日
12. 死のうかと思う
13. この世の果てや終わりでも
14. ビルの上から

プロフィール

太田信吾(おおた しんご)

1985年生まれ。長野県出身、横浜在住。早稲田大学の卒業制作として引きこもりをテーマに製作したドキュメンタリー『卒業』がイメージフォーラムフェスティバル2010優秀賞・観客賞を受賞。初の長編ドキュメンタリー映画となる『わたしたちに許された特別な時間の終わり』が山形国際ドキュメンタリー映画祭2013アジア千波万波部門に選出。また、俳優として「チェルフィッチュ」や「劇団、本谷有希子」に出演するなど、舞台•映像を横断して活動している。チェルフィッチュの最新作『スーパープレミアムソフトWバニラリッチ』にも出演している(KAAT神奈川芸術劇場で12月に公演予定)。

岡田利規(おかだ としき)

1973年 横浜生まれ。演劇作家 / 小説家 / チェルフィッチュ主宰。活動は従来の演劇の概念を覆すとみなされ国内外で注目される。2005年『三月の5日間』で『第49回岸田國士戯曲賞』を受賞。同年7月『クーラー』で「TOYOTA CHOREOGRAPHY AWARD 2005―次代を担う振付家の発掘―」最終選考会に出場。07年デビュー小説集『わたしたちに許された特別な時間の終わり』を新潮社より発表し、翌年第二回大江健三郎賞受賞。12年より、『岸田國士戯曲賞』の審査員を務める。13年には初の演劇論集『遡行 変形していくための演劇論』を河出書房新社より刊行。

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