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音を操るプロフェッショナル、内田学(Why Sheep?)の音楽論

音を操るプロフェッショナル、内田学(Why Sheep?)の音楽論

インタビュー・テキスト
萩原雄太
撮影:相良博昭

音楽は印象をサブリミナルに与えることができるメディアです。しっかりと聴かせるのではなく、印象として聴かせることによって、無意識に世界に飲み込むことができるんです。

―内田さんのデザインする音楽は、舞台に対してどのような効果を生み出しそうですか。

内田:たとえば、『メアリー・ステュアート』にはエモーショナルなニュアンスを含んだセリフがたくさんあります。「怒り」や「悲しみ」といった感情は、どれも一様ではなく複雑な色合いを持っている。そういった感情の機微をサウンドでも捉えることで、俳優の演技とも絡み合うような表現ができたらと考えています。

内田学

―繊細な感情の襞を表現するために、音楽が鳴らされる。

内田:そうですね。また、特にオーディエンスに対しては、幕が開いてから閉じるまで、完全に『メアリー・ステュアート』の世界観に飲み込みたいと思っています。中世なのか現代なのか、いったいどこにいるのかわからなくなるような感覚を与えたい。音楽はそういった印象をサブリミナルに与えることができるメディアです。しっかりと聴かせるのではなく「あんな感じの音が鳴っていたな……」と印象として聴かせることによって、無意識に世界に飲み込むことができるんです。今回は音自体を聴かせることが目的ではないので、舞台作品の一部としての音楽を目指しています。

―Why Sheep?の作品とはかなり違った音の響き方が楽しめそうですね。

内田:Why Sheep?は、劇場やクラブなど、みんなで聴くという楽しみ方ではなく、1人でじっくりと集中しながら楽しまれる音楽なのかな、と思っています。聴かれ方もまるで異なってくるでしょうね。

―音楽家として、どういった環境で自分の楽曲が聴かれるのかはとても重要だと思いますが、普段からこうやって聴いてほしいというこだわりはあるのでしょうか?

内田:その人なりの楽しみ方でいいと思っています。以前、アニエス・ベーのアートディレクターであるローラン・グナシアさんが女優の寺島しのぶさんにプロポーズしたとき、BGMとしてWhy Sheep?の曲をかけていたそうです。その縁で、彼らの結婚式に流すためのウェディングリミックスを作ったこともありますよ。

―Why Sheep?の曲でプロポーズして、結婚式を挙げるなんて、たしかに思いもよらないシチュエーションですね(笑)。

内田:今回のサウンドデザインは、Why Sheep?の音楽を知っている人であれば、アプローチの差に驚くのではないかと思います。もちろん、音の選び方は僕の生理的なものだし、オペレートはライブアクトを経験値としているので通底する部分はありますが、気兼ねなく自分を主張しまくりのWhy Sheep?とは音の作り方の段階からまるっきり異なっているんです。

内田学

―では、逆に、舞台やアルバム制作、あるいはサウンドインスタレーションといった表現手法の違いを越えて共通する、内田さんのベーシックな姿勢というのは何でしょうか?

内田:舞台音楽も、自分のアルバムも、サウンドインスタレーションも、「印象を残したい」という部分は共通していると思います。アルバム1枚を通して聴くことが1つの世界観を体験することであるように、『メアリー・ステュアート』でも、幕が開いてから降りるまで、1つの完成された世界を体験できるものであってほしいんです。また、僕の音楽表現は、常に人と音とのインタラクティビティーがテーマとなっています。今回の舞台であればメアリーやエリザベスなどの俳優と音とのインタラクションであり、劇場にいるオーディエンスと音とのインタラクション。アルバムの制作ならリスナーとのインタラクションであり、枯山水サラウンディングならセンサーを使った来場者とのインタラクション。常に人間を気にして作っているということがあります。

―そういう意味では、内田さんが演劇の音楽を手がけることは、けっして意外ではなく感じますね。お話をしていても、『メアリー・ステュアート』に対する高いテンションが伝わってきます。ということは、やはりWhy Sheep?の新作はまだまだ先になるのでしょうか?

内田:じつは、1996、2003、2014年と枚数を重ねるにつれ、アルバムをリリースする周期がだんだん伸びているんです。これまでにリリースした作品は、映画『スター・ウォーズ』シリーズのように3部作だと考えていて、次回作からはセカンドシーズンが始まる予定なんですが、生きている間に聴けるかな……という感じかもしれません(笑)。

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イベント情報

PARCO Production
『メアリー・ステュアート』
フリードリッヒ・シラー作『メアリー・ステュアート』の自由な翻案

作:ダーチャ・マライーニ
訳:望月紀子
演出:マックス・ウェブスター
衣装デザイン:ワダエミ
出演:
中谷美紀
神野三鈴

東京公演
2015年6月13日(土)~7月5日(日)全26公演
会場:東京都 渋谷 パルコ劇場

大阪公演
2015年7月11日(土)、7月12日(日)
会場:大阪府 シアター・ドラマシティ

広島公演
2015年7月15日(水)
会場:広島県 アステールプラザ・大ホール

名古屋公演
2015年7月18日(土)、7月19日(日)
会場:愛知県 名古屋 ウインクあいち・大ホール

新潟公演
2015年7月24日(金)
会場:新潟県 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館

福岡公演
2015年7月30日(木)
会場:福岡県 キャナルシティ劇場

リリース情報

Why Sheep? 『Real Times』(CD)
Why Sheep?
『Real Times』(CD)

2014年10月8日(水)発売
価格:2,500円(税込)

1. Rue Pierre Leroux
2. Radiation #1
3. 11th (Away From The Borders, Close To The Borderless)
4. Radiation #2
5. Somewhere At Christmas
6. Grum Sai Grum
7. On My Answering Machine
8. relativisme extreme
9. Mandarake
10. Empathy
11. Senga(Empathy Reprise)

プロフィール

内田学(うちだ がく)

1996年にWhy Sheep?の1stアルバム『sampling concerto no.1 “the vanishing sun” op.138』をリリースし、国内外のメディアで大きな反響を呼ぶ。その後、世界各国を放浪後2003年に2ndアルバム『The Myth And i』が日、欧、米と世界発売される。国内外での公演を精力的にこなす一方、数々のリミックスや映画のサントラ、プロデュース等を手がける。2007年には、音を禅の作庭術になぞらえたサウンドアートプロジェクト「枯山水サラウンディング」を立ち上げクリエイティブディレクターを務める。2014年、UAや海外のアーティストが参加した集大成ともいえる3rdアルバム『Real Times』をリリース。

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