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伝統工芸職人×デザイナーのオリジナル酒器作り。私物の器も公開

伝統工芸職人×デザイナーのオリジナル酒器作り。私物の器も公開

村上木彫堆朱
インタビュー・テキスト
杉原環樹
撮影:鈴木渉 編集:野村由芽

昔ながらの「匂い」を残すのか、残さないのか

―みなさんにお持ちいただいたものはそれぞれ、日常のちょっとした場面で、すこし贅沢な気持ちを味わえるようなものですね。堆朱は長持ちすることも、よくわかりました。

富樫:修理して使っている人も多いんです。職人が生きている間、保証付きですよ。

川上:でもいまは、村上の一般家庭でも、堆朱に触れる機会は減っているね。

小林:堆朱は引き出物や記念品によく使われていたので、家にあることはあるんですが、どこかに飾ったり、仕舞ったりしたままになっているね。村上でもここ20年ほどは「日用品だよ」と、一生懸命に言うようにはしているんですが、そこまで効果を上げられていなかった。

富樫:最近の家は、床の間もなく、飾る場所すらなくなっているというのも影響していますね。私の家は古い日本家屋なんですが、堆朱は本来、そうした環境で生まれて、使われてきた。それが変わったいま、新しいあり方を探らなければと。

―そういう課題があって、「現代の生活環境に合う器を」という思いから今回のプロジェクトが始まったんですね。

富樫:はい。われわれ職人には、「売れるものを作らないと」という意識が強くあって、そのためには昔ながらの堆朱の「匂い」を残したものを作るのが無難だったわけです。だけどそういう昔のものを買ってくれるのは、漆の良さを知った高齢者の方が多い。今回は若い人にも違うかたちでその良さを知ってもらう、突破口にしたいと思ったんです。

日常にハレ気分をもたらす、4つの「朱器」に込められた想い

―クリエイターのみなさんには、今日、初めて完成した器を見てもらっています。実物はいかがですか?

とんぼせんせい:こうした伝統的工芸品とイラストとの組み合わせはどうなるのかと思っていたんですが、赤と黒の色の対比もきれいだし、意外と馴染んでいたので良かった。前回の打ち合わせでは、器の内側に絵柄を彫ることは難しいかもしれないという話でしたが、彫っていただけたんですね!

「新潟」をテーマにしたとんぼせんせいの朱器。日本酒を注ぐ酒器に原材料であるお米を描いたユニークなデザイン
「新潟」をテーマにしたとんぼせんせいの朱器。日本酒を注ぐ酒器に原材料であるお米を描いたユニークなデザイン

お酒を注ぐと絵が浮かび上がってまた違った印象に
お酒を注ぐと絵が浮かび上がってまた違った印象に

小杉:多くの堆朱では「すり込み」といって、溝に漆をすり込むんですけど、今回は黒い漆を塗り込んでいるんです。水に濡れても大丈夫な塗りに変えたんですね。

高橋:黒い漆で厚みをつけているので、何年経っても綺麗な黒のままですよ。あまり内側に絵柄を彫ることはしないので、珍しい技法を試す機会になりましたね。

塩川:私は、これまでも食器を作った経験はあったのですが、紙の上にプリントするような感覚で絵をのせるものだったんです。今回は「彫る」というプロセスが入ることが面白味であると同時に、意志の伝達の難しさも感じました。自分が描いている線だけど、職人さんが彫る線でもあって、一緒に作っている感じが新鮮でした。

塩川いづみの朱器は、「結婚は山あり谷あり」をテーマにした「夫婦ぐい呑み」
塩川いづみの朱器は、「結婚は山あり谷あり」をテーマにした「夫婦ぐい呑み」

川上:その器は僕が彫ったんですけど、難しかった(笑)。やっぱり、塩川さんが考えられているものと、こちらの感じ方が違う。彫りの深さや漆の乗り込み具合によっても印象が変わるので、それを探るのが難しいね。はしのさんのお相撲さんの絵も、最初は線の太さをどうするか揉めたよね(笑)。率直に意見を言い合ってこのかたちになった。

お相撲さんをモチーフにしたはしのちづこの朱器。ペアで使うとより楽しい
お相撲さんをモチーフにしたはしのちづこの朱器。ペアで使うとより楽しい

はしの:打ち合わせで、もともと用意した絵が難しいと言われてしまって、そのあとかなり悩みました(笑)。私も塩川さんと同じで、紙ものや手ぬぐいのような平面に近いものは作ってきたけど、デザインを考えたあとは印刷所や工場に回してしまうんです。今回は最終的に人の手で彫るところが、とても珍しい体験でした。

雪浦:普段の制作とだいぶ違いますよね。私もいつもはパソコンで絵を描いているから、簡単に直線を引けるけど、この器は手で彫ったものなのに、とてもきれいに直線が出ていて驚きました。しかも、手作業ならではの揺れもあり、味わいになっているなと。

sneeuw(雪浦聖子のブランド)の朱器。ハレの気分を祝うようなイメージで、水引がモチーフになっている
sneeuw(雪浦聖子のブランド)の朱器。ハレの気分を祝うようなイメージで、水引がモチーフになっている

富樫:その器もけっこう苦労しましたね(笑)。というのも、通常、直線的な図案は平らなところに彫るものになんだけど、この器は側面が湾曲している。湾曲はまずいんです(笑)。

川上:富樫さん、文句をタラタラ言っていたもんね(笑)。

雪浦:すみません……。

富樫:いや、うまくできなかったら、顔も合わせられないと思ってね(笑)。さっきも言った通り、今回の器はどれも、良い意味で昔ながらの村上木彫堆朱の「匂い」がしないものなんです。だから、うまく表現できなかったら、僕たちの責任だなと思っていて。

左から:とんぼせんせい、雪浦聖子(sneeuw)、富樫春男。村上木彫堆朱の殻を破って新しいかたちを一緒に作り上げた同志
左から:とんぼせんせい、雪浦聖子(sneeuw)、富樫春男。村上木彫堆朱の殻を破って新しいかたちを一緒に作り上げた同志

とんぼせんせい:でも、手作業だからこそ、彫り師さんの個性が出るのが面白いですよね。僕の器の顔も、自分が描くものとはやはり微妙に違う。そういうブレが楽しいし、やっぱりお酒を入れると水面に顔が浮きあがり、見え方が変わるのが想像以上に面白い。

川上:計算通り、ということにしておきましょう(笑)。

とんぼせんせい:はい(笑)。職人さんと僕たちの双方にとって、新鮮な体験だったんじゃないかと。堆朱の事情を知らないからこそ提案できた部分もあって、それがうまく働いたと思います。

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プロダクト情報

村上木彫堆朱 新ブランド「朱器」

現代のクリエイターと村上木彫堆朱の職人のコラボレーションから生まれた、普段使いの漆器ブランド。気持ちを晴れやかに演出する“朱色”を活かしたデザインモチーフで、ひとつひとつ職人の手によって作られています。使い続けるほどに飴色に色づいていく朱器は、世界中に二つとない、あなただけの器となります。第一弾は「朱器の酒器」。酒坏を交わす度に色づく朱色と愉しい絵柄を愛でながら、今宵も一杯、ハレ気分。

プロフィール

塩川いづみ(しおかわ いづみ)

イラストレーター。1980年生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。広告、雑誌、商品などのイラストレーションを手がけるほか、展示発表も行う。

とんぼせんせい

「三本の線を引くだけでどこにでも現れる」をコンセプトに、人物、動物、風景、プロダクトなど、様々なイメージに憑依するイラストレーター。個展やグループ展の参加、企業・出版社へのイラスト提供から、ワークショップ講師、トークの司会など、多岐にわたる活動で活躍中。

sneeuw(すにゅう)

2009年スタートのユニセックスのアパレルブランド。コンセプトは「clean and humor」。シンプルな中に遊び心のある仕掛けをちりばめて日常を、少しだけ浮き上がらせる身の回りのものを作っていく。

はしのちづこ

イラストレーター。2012年美術大学を卒業。2013年のイベントをきっかけに手を繋いだお相撲さんのライブペイントやグッズを作り始める。

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