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渡辺俊美×木暮栄一の映画&文学談義 文豪たちの映画評にうなる

渡辺俊美×木暮栄一の映画&文学談義 文豪たちの映画評にうなる

『映画に魅せられた文豪・文士たち-知られざる珠玉のシネマガイド-』
インタビュー・テキスト
麦倉正樹
撮影:田中一人 編集:飯嶋藍子

今はどんな音楽や映画を作ろうと、基本的にはみんな褒めるけど、むしろ僕は斬って欲しい。(渡辺)

―なぜ「憧れ」は大事なんでしょう?

渡辺:だって、「憧れ」だけで生きる力になるじゃないですか。「こういう人になりたいなあ」とか「こういう女の人とつきあいたいな」みたいな感情や、目の前の厳しい現実を忘れさせてくれたりするところも全部含めて。音楽とか映画って、そういう意味でみんなの役に立っていると思うんですよね。

―今は「リアリティー」や「共感」といった言葉で表現されるように、自分の日常にどれだけ近いかが重視される気もします。

渡辺:そうですよね。今と比べて、当時は目の前に現実を叩きつけられても、「うっ」って苦しくなるような時代だったのかもしれない。現実はいいから、もっと夢を見させてくれよっていう。特に映画というのは、今以上にそういう役割を担っていたんじゃないかな。

―今回の展示は「文学」という視点でも楽しめると思うのですが、お二人はどんな作品がお好きなのですか?

渡辺:僕は池波正太郎さんが大好きで、著作を全部持っているぐらい大ファンなんです。池波さんのエッセイを読んで、池波さんが行ったお店を全部まわったりとかして(笑)。

池波さんは映画に関するエッセイも多いので、それを読みながら昔の映画を見たりしていました。映画の場合、その良さがサッパリわからないこともあるんだけど(笑)。

―そこの良し悪しの感じ方は、映画とお店では違うんですね。

渡辺:そう、お店だったら昔の味や雰囲気が今も残っていたりするから、池波さんが書いている良さもリアルに感じられるんですけどね。映画だとその映画がタイムリーだった頃の熱気や空気感が、なかなかわからなかったんです。でも、そういう時代感が、この展示を観てわかったような気がします。

木暮:僕も池波正太郎さん大好きなんですけど、池波さんの映画に関するエッセイって、たまにすごく辛口だったりして面白いですよね。

渡辺:うん、すごくキレキレなときがあって面白いよね。

木暮:辛口のものを同時代の雑誌に載せるのって、すごく勇気のいることじゃないですか。ものによっては、本当にバッサリ斬っているので。

渡辺:そこが今と違うよね。音楽もそうだけど、今はどんな音楽を出そうと、どんな映画を作ろうと、基本的にはみんな褒めるもんね。むしろ、僕は斬って欲しい。「こんなダメなアルバム聴いたことない」とか。

そんな文章を読んだら余計聴きたくなるじゃないですか(笑)。この展示も、全部が全部映画を褒めているわけじゃないけど、それも含めて興味を掻き立てますよね。

「今」の時代感をとらえることって、すごく大事だと思う。(渡辺)

―今回の一連の展示を見て、なにか気になった映画はありますか?

木暮:僕は『道』(1954年のイタリア映画で、フェデリコ・フェリーニ監督の代表作)ですね。池波正太郎さんが、年齢を加えるにつれて感情移入する登場人物が変わっていく、といったような文章を書いていたんですけど、その文章に加えて、ポスターを見て、いったいどういう映画なんだろうって(笑)。

映画『道』のポスター
映画『道』のポスター

渡辺:これ、すごいよね(笑)。ハードコアパンクとミュージカルが一緒になっているような感じがある。

―実際の映画の雰囲気とは、ちょっと違うような気もしますが……。渡辺さんは、どの映画が気になりましたか?

渡辺:僕は、3つ目のパート「映画は小説を超えたか」のところに展示してあった『にんじん』(1932年のフランス映画で、1894年に出版されたジュール・ルナールの小説が原作)に興味を持ちました。草野心平さんが書いた2行たらずの短いコメントで、是非観たくなりましたね。一緒に展示してあった『にんじん』の映画のポスターも、すごく雰囲気があって良かったです。当時の映画のポスターって、やっぱり男と女系が多いと思うんですけど、そういうなかで子どもに焦点を当てているのがいいなあって。

木暮:松本清張さんが、『ブルース・ブラザース』について書いていたのも面白かったですよね。

映画『ブルース・ブラザース』のポスター
映画『ブルース・ブラザース』のポスター

渡辺:「松本清張、『ブルース・ブラザース』観てたんだ!」っていう(笑)。

木暮:そうそう(笑)。まあ、あんまり好きじゃなかったのかな? って感じの文章だったけど、なんだかんだ言いながら当時話題になった映画はちゃんと観ていたんだなって。映画のある場面を自分の小説のなかで使ったとか書いていましたしね。

渡辺:作家って当時公開されていた映画を意外と観ているんだよね。当時の人たちも、やっぱり「今」の感覚を欲していたんじゃないかな。池波さんが時代小説を書いたりするのも、単に何百年前の話を書きたいわけではなく、それを今に通じる物語として書いているわけですよね。そのためには、やっぱりそのときそのときの「今」の感覚が大事だったんじゃないかな。

―実際相手にしているのは、「今」の読者なわけですからね。

渡辺:そうそう。そうやって「今」の時代感をとらえることって、すごく大事だと思うんです。僕がやっているTOKYO No.1 SOUL SETも、実はそういうとこから始まっていたりするので。

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イベント情報

『映画に魅せられた文豪・文士たち-知られざる珠玉のシネマガイド-』

2017年4月22日(土)~6月11日(日)
会場:東京都 練馬区立石神井公園ふるさと文化館
時間:9:00~18:00
休館日:月曜
料金:一般300(200)円 高校生・大学生200(100)円 65~74歳150円
※中学生以下と75歳以上無料
※()内は20名以上の団体料金
※身体障害者手帳・愛の手帳・精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方と付き添いの方1名は一般150円、高校生・大学生100円

講演会『出版人のひとりごと―映画と私―』

2017年5月27日(土)
会場:東京都 練馬区立石神井公園ふるさと文化館 多目的会議室
時間:13:30~15:00
出演:早川浩(株式会社早川書房 代表取締役社長)
定員:100名(抽選)
料金:無料
※申込は往復はがき、またはメールで受付中、5月16日必着

プロフィール

渡辺俊美
渡辺俊美(わたなべ としみ)

福島県出身。1990年代初頭「TOKYO No.1 SOUL SET」のボーカル&ギタリストとしてデビュー。福島県で生まれ育ち、福島県人バンド「猪苗代湖ズ」でも活動、2011年にNHK紅白歌合戦に出場。2014年にエッセイ本『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』を発表し、ベストセラーに。翌年にはNHK BSプレミアムでドラマ化。2016年、東日本震災から5年。震災復興の活動で大空に飛ぶ花と復興への想いを表現したANA“東北FLOWER JET オリジナルソング”の作詞・作曲を手掛ける。

the band apart
木暮栄一(こぐれ えいいち)

the band apartのドラマー、作詞作曲担当。現在までのバンドのリリース全てのアートワークを手がけている。また、DJとしても渋谷Organ Bar、三宿Webのレギュラーイベントを中心に活動中。2015年に eiichi kogrey 名義でのソロ7インチをNIW! Recordsからリリースし、現在までに3枚の7インチ・レコードを発表している。2016年には、同名義で東方神起、□□□(クチロロ)のリミックスなども手がけた。7月中旬リリース予定でthe band apartとして8枚目の新作アルバムを制作中。

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