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塚原悠也×渡邉朋也 アーカイブは100年後の創造性を刺激する

塚原悠也×渡邉朋也 アーカイブは100年後の創造性を刺激する

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インタビュー・テキスト
島貫泰介
編集:宮原朋之(CINRA.NET編集部)

アクセシビリティーを高めると、プラットフォームが表現化する

―保存することも大事だけれど、アクセシビリティーを高めておくのが重要、という共通の意識がおふたりにはありますね。

渡邉:自分の作品で言うと、オンラインで公開はするけどそう頻繁に利用されるものだとは思ってないですけどね(笑)。膨大なインターネットの世界の片隅のさらに一角を、自分の作品がある意味で「占拠」してるというパフォーマンスなので。

もちろんYCAMは、アーティストと作り上げた価値を世界に発信するというミッションがあるので、これまでの実績に対するアクセシビリティーにはすごく意識的です。

渡邉朋也
渡邉朋也

塚原:アクセシビリティーと同時に、いかに残すかも重要。大学時代は舞踏研究でニジンスキー(ロシア出身のダンサー、振付家。バレエ・リュスを創設し、現代バレエに多大な影響を与えた)とか土方巽(日本発の現代舞踊である暗黒舞踏の創始者)の話がよく出るんです。

土方はかろうじて映像が残ってますけど、いまの機材で記録できていたらかなり面白かっただろうと思いますし、ニジンスキーだと舞台の端から端までジャンプして跳んだみたいな伝説が残っていて、「映像で見てみたかった……いや、むしろ撮影したかった!」っていうのはありますね。

塚原悠也
塚原悠也

渡邉:Gonzoって映像をけっこう公開してますよね。あれを見た誰かが真似してみたくなって実際にやってみた、みたいな状態はウェルカムですか?

塚原:ウェルカムです! Gonzoを立ち上げたときのメンバーだった垣尾優とも共有してた考えは「オープンメソッドにして世界で流行らせたろ!」でした(笑)。「スケボーするか、Gonzoするか」ぐらいの勢いで。

『植野隆司、さや × contact Gonzo』ワタリウム美術館 コンタクトゴンゾ展『PHYSICATOPIA』関連パフォーマンス
『植野隆司、さや × contact Gonzo』ワタリウム美術館 コンタクトゴンゾ展『PHYSICATOPIA』関連パフォーマンス(Vimeoで見る

渡邉:contact Gonzoってチームの名前でもありつつ、「方法論の総称」と名乗っていますもんね。それがユニークだし、Gonzo的なことは誰がやってもいい、というスタンスはもっと広がって欲しい。

塚原:Gonzoを広める活動はけっこう進めたいですよね。かつ、僕らがやるGonzoと例えば渡邉さんがやるGonzoはぜんぜん違っててもいい。

「僕らが正解ではない」っていう世界ができたらいいなと思ってるんです。下手すると、勝手にGonzoを名乗ったわけわからん奴らが、勝手に仕事もらって、イベントに出てくれたりしたら面白いとすら密かに思ってます。

―むしろ、積極的にパクれと(笑)。

塚原:できたらプレゼントを贈ってほしいです(笑)。拠点にしてる国のスパイスをくれるとか。そうやって世界中にGonzoのブランチみたいなものができたら楽しいですね。だから意識的に映像を外に出しまくっていた時代もあります。

渡邉:Gonzoの「のれん分け」みたいで、夢がありますよね。自分は、アーティストユニットのエキソニモをはじめとする仲間たちと一緒にIDPW(あいぱす)という名義で『インターネットヤミ市』っていうイベントを主催していて、それはインターネットぽいものを実空間で売買する催しなんですね。

『IDPW presents インターネットヤミ市』2013年
『IDPW presents インターネットヤミ市』2013年(関連記事:「ネットアートの先駆者エキソニモと考える、ネット表現の未来」

渡邉:いまは海外中心にやっているんですけど、基本理念として誰でも勝手にやっていいんです。ただ数少ないルールのひとつに、開催の様子を写真に撮って送ってほしいというものがあります。できれば何かしらの成果物を送ってください、と。

塚原:僕らが考えてたとのほぼ同じ形式。同じ問題意識って感じがする。

渡邉:そうですね。表現としてのプラットフォームなんだという意思表示の現れだと思います。

塚原:1UPっていうアーティストのグラフィティーをヨーロッパではよく見かけるんですけど、本当にあらゆる街のあらゆるビルで見かけて「こいつすげえな!」って思ってたんですよ。けど、数年前にじつは1UPが複数人いることを知ったんです。認定されたメンバー(?)はステッカーとかをみんな持っていて、そのあり方はめっちゃ勉強になりましたね。

バルセロナの街なかに見られる1UPのグラフィティー / Photo by Stoerer Dresden(flicker)
バルセロナの街なかに見られる1UPのグラフィティー / Photo by Stoerer Dresden(flicker

渡邉:オリジネイター(創始者)だからすごい、それを真似しないといけない、っていう風にならない仕組みが重要だと思うんですよね。

塚原:そこです! そのスタンスは常に推していきたい。

渡邉:『インターネットヤミ市』の場合、最初は東京で開催して、そのあとソウルとかニューヨークとか、いろんな場所で規模も大きく開催できるようになりました。2015年にNYでのヤミ市を準備してたときに、同時期にニューオリンズでもやりたいというメールをもらって、後日その様子を写真で送ってもらったんですよ。そしたら街にある公道の、中央分離帯みたいなところで5人くらいでやってるんですよね。

塚原:(笑)

ニューオリンズで開催された『インターネットヤミ市』の様子
ニューオリンズで開催された『インターネットヤミ市』の様子

渡邉:自分らのやりたいことがニューオリンズの人にもちゃんと伝わってたんだな、と。かたちを変えて、最小限ギリギリまで切り詰めても、それでもなお『インターネットヤミ市』の核の部分はきちんと残ってるように感じました。もはや自分たちのものではなくて、みんなのものになってるんだなと感じた瞬間でもあります。

塚原:めっちゃいい。

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サイト情報

緊急舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター化支援事業(EPAD)
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文化庁より令和2年度戦略的芸術文化創造推進事業「文化芸術収益力強化事業」として採択された「緊急舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター化支援事業」。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い困難に陥っている舞台芸術等を支援、収益強化に寄与することを目的に設置され、新旧の公演映像や舞台芸術資料などの収集、配信整備、権利処理のサポートを行っている。

プロフィール

塚原悠也(つかはら ゆうや)

KYOTO EXPERIMENT共同ディレクター。関西学院大学文学部美学専攻修士課程修了後、NPO法人ダンスボックスのボランティア、運営スタッフを経て、アーティストとして2006年パフォーマンス集団contact Gonzoの活動を開始。2020年、演劇作品『プラータナー:憑依のポートレート』におけるセノグラフィと振付に対し「読売演劇大賞」スタッフ賞を受賞。同年より京都市立芸術大学彫刻科非常勤講師。

渡邉朋也(わたなべ ともや)

1984年生まれ。東京都出身。2010年8月、YCAMのスタッフに着任。展覧会や公演など主催事業全般のドキュメンテーションのほか、YCAMが発表した作品の再制作のプロデュースを手がける。主な著書に『SEIKO MIKAMI-三上晴子 記憶と記録』(2019年/NTT出版/馬定延との共編著)がある。

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