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大山卓也が語る、ナタリー創業から社長退任までの10年間

大山卓也が語る、ナタリー創業から社長退任までの10年間

CAMPFIRE
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中一人 編集:柏井万作、矢島由佳子

何年か前は、自分が死んだらナタリーも一緒に終わると思ってたけど、もうそんなこともないなって。

―10周年のタイミングで、代表取締役を退任されて、取締役会長に就かれるとのことですが、その理由をお聞かせいただけますか?

大山:もともと自分の中で会社って、創業者が同じやり方でずっと続けていくんじゃなくて、代替わりしながら、新しい血が入ってくる方が健全だと思っていて。

あとはそもそも、「どうしても自分がやりたい」っていうタイプじゃないんです。もともとナタリーを始めたのも、ナタリーみたいなものが世の中になかったから、「しょうがない、自分でやるか」って始めたようなところがあるので、自分以外の人がやってくれるんだったら、全然それでよくて。

今は、各編集長はもちろん、スタッフ一人ひとりとも「ナタリーこうあるべし」っていうのを共有できていて、自分があれこれ言わなくても、ちゃんとナタリーとして続いていくという確信が持てたので、10年っていい区切りだし、現場からは離れて、一歩外から見守る立場になれたらいいかなって。

大山卓也

―今後は何か別のことを始める予定なのでしょうか?

大山:いや、まるっきり白紙です。実際の業務はそんなにないとしても、会長の肩書きはあるから、その間は他のことはそんなにできないし。とりあえずちょっとのんびりして……このまま隠居する可能性もあるし(笑)。

―いやいや(笑)。でも、唐木さんの退社(唐木元 / コミックナタリー、おやつナタリー、ナタリーストアなどを立ち上げた元取締役。2015年にナタリーを辞め、バークリー音楽大学に進学)に続いて、卓也さんも現場を離れるとなると、本当に代替わりですね。

大山:それでもちゃんとナタリーイズムみたいなのがキープできてるから、安心感はあるんですよね。何年か前は、自分が死んだらナタリーも一緒に終わると思ってたけど、もうそんなこともないなって。

ただ、今あるコンセプトにこだわり続ける必要もないというか、僕がこのままトップで指揮を執り続けて「同じことを続けていく」みたいになっちゃうのも怖いから。あとを引き継いだメンバーには、自分が信じる通りにナタリーをどんどん変えていってもらえればと思ってます。

ちゃんと正しいことをし続けるというか、真っ当なことをしていれば、自分の仕事にやりがいを持って、一生懸命できる。そういう10年だったんじゃないかなって。

―この連載記事はCINRA.NETとCAMPFIREの合同企画なのですが、卓也さんはクラウドファンディングについてはどのような印象をお持ちですか?

大山:僕もクラウドファンディングは支援という形で何度も参加しているので、すごく面白いなって思ってます。ただその一方で、「そのくらいの金はバイトすりゃあいいんじゃないの?」って思うようなのもありますね。

そう思う場合って、金額の大小に関わらず、クラウドファンディングという場所を宣伝目的で使っていたり、もしくは支援者との共犯関係を結ぶことによって、何かを大きく見せようとしていて、そういう動機でやってるクラウドファンディングは不純だと思います。「ファンディング」っていうぐらいなんだから、お金を集めることが第一の目的であってほしいとは思いますね。

大山卓也

―では最後に、エンターテイメント業界に入りたいと思っている人、また興味はあるんだけど、業界の未来に不安も感じている人に対して、何かメッセージを伝えていただけますか?

大山:ナタリーで編集記者募集って告知を打つと、すごくたくさん応募が来るんですよ。でも、「書きたいです」って言うわりに、書いてない人がすごく多いから、書きたいんだったら、まず書けばいいのにって思う。

今はブログでも何でもあるんだから、まずは実際書いて、それを見せてくれれば、技術だけじゃなく、「書くのが好きなんだな」ってわかるから、こっちも一緒に働きたいって思える。ZINEを作ったりするのもいいですよね。それはエンジニアでもデザイナーでも一緒で、しょぼくてもいいから自分のサービスを立ち上げてみるとかサイトを作ってみるとか、そういうことが最初の一歩になるはずで。

―僕もライターになる前に自分のホームページで4~5年ひたすら文章を書いてた時期があったので、非常によくわかります。「ミュージックマシーン」にしても、ほぼ毎日更新されていましたもんね。

大山:5~6年くらい毎日やってた。何かの狂気があそこにあったんだと思うけど(笑)。

―自分の狂気に素直になって、まずはやってみろと(笑)。

大山:それができないんだったら、「そんなにやりたくないんじゃない?」っていうね。

―卓也さんご自身は、今の仕事をやっていてどんなときに一番やりがいを感じますか?

大山:自分が現場で記事を書くことは減ってきて、今はナタリー全体のプロデュースが大きな仕事なので……それで言うと、スタッフ一人ひとりが楽しそうにやってるのを見るのが好きですね。100人近い社員がいて、会社が回ってるのってすげえなって、他人事みたいに思うんですけど、それぞれがこの場所で自分のやりたいことをやれてたら最高だなって。

10年やれたのは、ここで働く一人ひとりが自分の仕事に意義みたいなものを感じてくれたからだと思っていて、「世の中に」って言うと大きくなっちゃうけど、ポップカルチャーのシーンみたいなものに対して、自分たちの仕事が多少なりとも貢献できているという実感があるからだと思うんです。どんなにお金になったとしても、年寄りを騙したりする仕事は嫌じゃないですか(笑)。

―その通りです(笑)。

大山:そうじゃないからこそ、自分の仕事に誇りとやりがいを持って続けられるんだと思うし、そういう場が作れたのは、今の自分にとってすごく嬉しいことですね。

―でもホント、スタッフが100人いるウェブメディアって、すごいです。

大山:みんなそれぞれ個性的で趣味もバラバラだけど、メディア作りに関してはちゃんと同じ方向を向いてやれてる。で、それは僕のカリスマによるものではないんです。ホントにカリスマがあるリーダーは、白いものを黒って言っても、みんなが「はい、黒です」ってついてくるんだと思うけど、僕にはそんな力はない。その代わり、白いものをちゃんと白って言うのが僕の仕事だと思っていて、「確かに白だ、正しい」って思えたら、みんながそっちの方向に進めると思うんですよね。

そうやって、ちゃんと正しいことをし続けるというか、真っ当なことをしていれば、自分の仕事にやりがいを持って、一生懸命できる。そういう10年だったんじゃないかな。最初はそんなこと考える余裕もなかったけど、節目だなって思うと、そういう気持ちになる。

大山卓也

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プロフィール

大山卓也(おおやま たくや)

1971年7月25日、北海道札幌市生まれ。北海道大学文学部卒業。株式会社メディアワークス(現KADOKAWA)にて7年間にわたり雑誌やウェブメディアの編集を手がける。在職中の2001年に個人運営の音楽ニュースサイト「ミュージックマシーン」を立ち上げ。2006年に代表取締役として音楽ニュースサイト「ナタリー」などを運営する株式会社ナターシャを設立。2007年2月から自社運営のニュースサイト「ナタリー」をスタートさせる。2017年2月、ナタリー10周年を機に取締役会長に就任。

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