「クリエイターが国際的に活躍するために必要なものは何か?」──全5回にわたり、国際的な活躍を目指すプレーヤーや、それを支える団体へのインタビューを通して考えてきた本連載。
最終回となる今回は、クリエイター支援基金のプロジェクト「WAN: Art & Tech Creators Global Network」(以下、WAN)、「New Way, New World: Program for Connecting Japanese Animators to the World」(以下、NeW NeW)、「JUMP アーティスト+キュレーター国際協働プログラム」(以下、JUMP)の各プロジェクトを牽引するアドバイザー陣が集結。日本、そしてニューヨークと台北からオンラインで参加するという、まさに国境を越えたかたちで座談会が行われた。
国立アートリサーチセンター エグゼクティブ・アドバイザーでJUMPの設計・メンターも務める片岡真実、株式会社ニューディアー代表でNeW NeW総合プロデューサーである土居伸彰、WANアドバイザーでアートユニットexonemoの千房けん輔・赤岩やえという、国内外を問わず豊富な経験を持ち、長年にわたって文化芸術の発展に寄与してきた3組。
座談会では、各プロジェクトの特徴からはじまり、それぞれの分野がかかえる課題、必要な支援のあり方、そしてクリエイターに必要な資質などを語り合った。国境を越えて活動するために必要なものは、何なのか。その答えを探る言葉の先に、これからのクリエイターと文化のあり方が見えてきた。
越境と海外ネットワークの構築。3つのプロジェクトが目指すものとは?
「WAN: Art & Tech Creators Global Network」。「クリエイター・アーティスト等育成事業」のメディアアート分野の委託事業で、運営事務局はCG-ARTS。海外展開を目指すアーティストやキュレーター、リサーチャー等を対象に、ニューヨークに滞在させ、現地での活動や国際的なネットワーク構築の支援を行う。
「New Way, New World: Program for Connecting Japanese Animators to the World」。「クリエイター・アーティスト等育成事業」の短編アニメーション分野の委託事業で、こちらも運営事務局はCG-ARTS。国内の有望な短編アニメーション作家のなかから、海外進出に強い意欲を持ち、将来海外での活躍が期待される作家を対象に、企画開発から海外展開までを一体的に支援するプログラム。育成対象者に対して、アドバイザーによるレクチャーや新作企画に対するコーチングなどを提供し、国内外の映画祭などでピッチ機会の提供や作品上映等も行う。ウェブサイトでの情報発信も重視しており、イベント開催のレポート記事やインタビューのほか、支援作家の国内外の派遣先でのレポートも多数掲載している。
「JUMP アーティスト+キュレーター国際協働プログラム」。「クリエイター・アーティスト等育成事業」の現代アート分野の委託事業で、運営事務局は独立行政法人国立美術館 国立アートリサーチセンター。日本の新進アーティストと若手キュレーターの国際的な活躍を支援する育成プログラム。海外3都市(リスボン、ロサンゼルス、シドニー)の美術館との協働のもと、3組のアーティストとキュレーターが、複数回にわたる海外滞在を通じてリサーチを行い、それに基づく作品を制作、現地の美術館で展示を行う。
―みなさま、クリエイターを支援するユニークなプロジェクトに携わられています。まずは、それぞれの企画の特徴を教えてください。
千房けん輔(以下、千房):WANは、海外展開を目指すアーティストやキュレーターをニューヨーク滞在などで支援し、国際的なネットワーク構築とグローバル人材育成を目指すプロジェクトです。これまで8名のアーティスト / キュレーターが選出されニューヨークに来ていて、いまは3期目のメンバーが参加するタイミングですね。
特徴としては、ニューヨークで何をやりたいのかをクリエイター一人ひとりに考えてもらって、それに合わせた支援をテーラーメイドで組んでいること。いまのところ現地で展示を行う方もいれば、リサーチやネットワーク作りに集中する方もいて、それぞれにとって大事な経験を積み上げています。
例えば、第一期採択クリエイターの木原共さんは、現地でのネットワーク作りに注力し、そこで築いたつながりを起点として、イベントへの登壇やインタビュー取材・展覧会への参加など、具体的な成果につなげていました。
赤岩やえ(以下、赤岩):「Wide Area Network」の頭文字から取ったWANは、ネットワーキングをコアに据えています。WANに選ばれたクリエイターたちが、単に海外で成果展示をして帰るというだけじゃなく、各自がネットワークを構築することで、他の人のネットワークと重なったり、日本のネットワークとつながったりして、シーン自体を広げていくのがプロジェクトの目的の一つですね。
exonemo(エキソニモ)。千房けん輔と赤岩やえによるアートユニット。1996年よりインターネット黎明期からネットアート作品を手がけ、2000年以降は実空間での展示にも活動を広げ国内外の展覧会やフェスティバルで作品を発表している。2006年には世界最大のメディアアート のコンペティション「プリ・アルスエレクトロニカ」でゴールデン・ニカ(大賞) を受賞。2015年よりニューヨークを拠点に活動している。
―キャリアや課題に応じて必要な支援を個別に設計しているのは大きな特徴ですね。NeW NeWでは短編アニメーション作家を支援していますが、どのような特徴のプロジェクトでしょうか。
土居伸彰(以下、土居):NeW NeWは国内の短編アニメーション作家のなかから、海外進出に強い意欲を持ち活躍が期待される作家を対象に、企画開発から海外展開までを一体的に支援しているプログラムです。これまで日本におけるこうした支援では、基本的に日本で選考していたと思いますが、本プロジェクトは海外との国際共同製作を成立させることを目標にやっているので、海外のアドバイザーからのコメントをかなり重視し、ニーズのある作家をしっかり選出しています。
採択された作家は新作企画を改めて練り直し、海外のプロデューサーたちが新作について理解できるフォーマット(企画書や脚本など)にアウトプットして、海外の映画祭でプレゼンテーションやピッチを行えるかたちにまでもっていきます。
WANと同様にネットワーク構築も重視しています。採択作家を海外の主要映画祭に派遣するだけではなく、海外のアニメーション業界のプロデューサーや配給業者、映画祭プログラマー、批評家といった方々を日本に招聘し、採択作家はもちろん、それ以外の日本の作家・関係者との直接的な関係づくりの機会も提供しています。
土居伸彰(どい・のぶあき)。株式会社ニューディアー代表、ひろしまアニメーションシーズン(ひろしま国際平和文化祭 メディア芸術部門)プロデューサー。インディペンデント・アニメーションの研究者としてキャリアをスタートしたのち、インディペンデント作品を広めるために会社(ニューディアー)を設立。近年はプロデュース業にも力を入れ、国際共同製作による作品製作にも携わる。
―片岡さんが枠組みを設計し、メンターを務めるJUMPはどんなプロジェクトなのでしょうか?
片岡真実(以下、片岡):JUMPは日本の新進アーティストと若手キュレーターの国際的な活躍を支援する育成プログラムです。リスボン、ロサンゼルス、シドニーの美術館と連携し、3組のアーティストとキュレーターが、複数回にわたる海外滞在を通じてリサーチを実施。それに基づく作品を制作し現地の美術館で展示を行います。
2024年夏にキュレーターが決定したあと、現地の美術館のディレクターやキュレーターとのディスカッションを重ねながらアーティストを選定し、現在は現地でのリサーチと作品制作を実施中です。今年の秋から順次、現地での展示が始まります(※)。国内の美術館だとリサーチに数年かけることが難しい状況もあるので、複数年にわたり支援されるクリエイター支援基金だから実施できているプログラムかと思いますね。
「JUMP」という名前は、あらゆる境界を超えてほしいという願いを込めてつけた名前です。文化芸術とは国境を超えていくものだと思います。いまちょうど森美術館のプロジェクトとしてディアスポラのリサーチをしていますが、そもそも人類の歴史は移動とともにある。とくに人が国境を超えたとき、言語や食などが混ざり合って新しい文化が生まれます。そんな経験を実地でしてほしくて、国際経験の少ないアーティストを日本と海外のキュレーターと一緒に選びました。
※2026年11月7日よりシドニーのニュー・サウス・ウェールズ州立美術館 、 11 月 28 日よりリスボンの CAM ― グルベンキアン・モダンアートセンター、そして 2027 年 2 月 25 日よりロサンゼルス現代美術館 にて、展覧会・パフォーマンス等を開催予定。
片岡真実(かたおか・まみ)。2003年より森美術館、2020年に館長に就任。2014年から2022年にかけて国際美術館会議(CIMAM)理事・会長を務めたほか、光州ビエンナーレ(2012年)、シドニー・ビエンナーレ(2018年)、国際芸術祭「あいち2022」など国内外の国際芸術祭で芸術監督を歴任。2027年にはヘルシンキ・ビエンナーレを共同キュレーションする。2023年には国立アートリサーチセンター初代センター長に就任し、2026年よりエグゼクティブ・アドバイザー。
アニメーションと現代アート、それぞれがかかえる日本の課題
―各業界から見て、いまの日本の各分野の芸術 / 文化への課題や支援の現状をどのようにとらえていますか?
土居:NeW NeWが取り上げる短編アニメーションについて言うと、いわゆる商業アニメーションと大きく違うのは、マーケットがないことです。世界的に見ると、アニメーション制作には公的支援が当たり前のように入っています。日本はかなり例外的な事例なのです。NeW NeWが目指しているのは、日本においてヨーロッパ・モデルの短編アニメーション製作を根付かせることです。複数の国のプロデューサーが関わり、公的資金を組み合わせながら作っていくかたちです。
日本は伝統的に、アニメーションに対する公的な支援が薄い国だと認識されてきました。しかし、この5年から10年で状況が大きく変わったと感じています。今回のクリエイター支援基金も含めさまざまな新たな制度がスタートし、併存しています。
だからこそ、この流れを逃してはいけないと思っています。日本の制度をヨーロッパの制度と組み合わせることによって、日本で活動していたとしても、じゅうぶんな予算を獲得したうえで新作を作れるのだ、ということを証明していきたいと思っています。
赤岩:メディアアートで言うと、アメリカには公的な支援がほぼないので、日本の環境は比較的恵まれていると思います。また、公的支援で海外での活躍を後押しする流れも、いまの時代に必要だと感じています。
というのも、昔は国内のメディア・アート・センターが盛んに活動していて、海外の作家やキュレーターと交流するチャンスがあった。そうしたつながりがいまは弱まっていると感じるので、今回のプロジェクトのように公的な支援でうまく結びつけていかないと、若い人たちが国内にとどまってしまいかねない状況だと思います。
千房:僕らの若い頃より海外に出ていくハードルが上がっていると感じますね。円安も関係するかと思いますが、日本と海外のシーンに断絶が生じている。ニューヨークでもときどき「最近、日本のことを全然聞かないんだけど」って話題になったり。だからこそ今回のプロジェクトやクリエイター支援基金を通して若い人を海外に押し出すというのは、すごく時流に合ってるんじゃないかな。
文化醸成のために必要な支援のあり方
―片岡さんは現在の公的支援のあり方、必要な支援についてはどうお考えでしょう?
片岡:今回のクリエイター支援基金もそうですが、近年は長期的な支援を視野に入れた方向に変わってきているので、いい流れにあるとは思います。美術に限らず、日本の文化芸術を戦略的にブランド化していくことが重要です。政府はクリエイティブ産業を世界に発信することを目指していますが、現代アートからポップカルチャーまで、どういうプレゼンテーションをしていくかというのは、もう少しビジョンが欲しいところ。
たとえば、日本の著名な建築家やデザイナーについて俯瞰して見られる場所がない。香港には「M+」(※)のなかにそうした常設展示がありますが、日本の現代的な芸術文化を統合して海外に紹介するような施設がないので、公的支援の枠組みにおいても、そういう国際的な発信に対する戦略が見えてほしいと思います。
さらに、長期的な投資としてさまざまな支援をしていくことで、10年後、20年後に世界で活躍できる優れたアーティストが育つような構図が必要です。文化芸術は単年度会計をもとにした1年ごとの思考回路だと長期的なビジョンが見えてきません。
※香港・西九龍文化区にある視覚文化専門のミュージアム。2021年に開館した。20〜21世紀のアジアを中心とする現代美術・デザイン・建築・映像作品を収蔵・展示しており、アジア最大級の現代視覚文化施設の一つとされている。
土居:その意味でクリエイター支援基金がすごくいいのは、複数年にわたって実施できるプロジェクトだということです。NeW NeWでは、6月にヨーロッパ(ザグレブ、アヌシー、パリ)、9月から10月にカナダ(オタワ、モントリオール)に採択作家を派遣しています。
毎年派遣される作家の顔ぶれは違いますが、NeW NeWとして継続的な派遣を行うことで、「いま日本で面白い流れが始まっている」と、海外のプロデューサーや映画祭関係者から注目を集めやすくなっており、結果的に第2期・第3期の作家たちは次々と国際共同製作のオファーがくるようになりました。プラットフォームとして機能しはじめているということです。
短編の共同製作って、作家とプロデューサーのあいだの人間関係で決まることが多いわけです。リスペクトしあって一緒に仕事をしたいと思えるかどうかは、実際に会わないとわからない。かつ、1回だけ会って何かが決まることってあまりなくて、やはり継続的なつながりが作られていくと、次第に一緒に仕事をしようという雰囲気も醸成されていく。
千房:そうですね、やっぱり継続的な支援というのはすごく重要だと思います。WANでも単発で終わらないように、1期目と2期目でつながって、そこでできたネットワークにさらに3期目とつながって広がっていく。このプロジェクト自体のネットワークが蓄積されていくことが重要だと思っているんですよね。
WANに参加しているというアイデンティティがアーティスト達にも支援側にも継続していきますし、現地のアート関係者への認知も広がっていきます。新しくアーティスト達が来るときに、現地の人たちに前回のアーティストとの関係を思い出してもらえて、また紹介して欲しいと言われたりもします。
支援される側には意識されにくい部分かもしれませんが、現地の側としては、単発で来る人たちよりも理解が早いし、信頼も積み重なっていくことが最大の利点ではないでしょうか?
片岡:いずれにしても、文化芸術は即効的な収益性があるわけではないので、そこをよく理解しなければいけません。自己収益性を求めていくと娯楽やエンターテインメントに近づきますが、大衆性を担保しながら、即時的に収益にはつながらないような芸術的実践に対しての公的な支援がさまざまなかたちで必要だとは思います。
拠点の不在から美術館の新しい役割まで、文化芸術を支える「場」を考える
―長期的な視点で文化芸術の支援を考える必要があるという指摘には、とても納得します。ほかに必要だと感じるものはありますか?
千房:活動を長期的にとらえるうえで、物理的な拠点があることも大切ですよね。単発のイベントだと点で終わってしまうので、複数年にわたって長期的に続けることで線になる。それを可能にするのは、何かしらの場所だと思うんですよ。でも、そういう日本独自のスペースはニューヨークには少ないのです。中国や韓国のスペースはけっこうあるんですけどね。
土居:たしかに場所って本当に大事ですよね。短編アニメーションというくくりで考えると、海外のアドバイザーなどが日本を訪れたときに連れていくところが、どうしても美大ばかりになってしまう。意外とその辺りに難しさがある。
―片岡さんは森美術館の館長を務めていますが、いまとくに美術館にはどのような役割が求められていると考えますか?
片岡:美術館の役割でよく参照されるのは、2022年に更新されたICOM(国際博物館会議)のミュージアムの定義です。作品を収集・保存・研究・普及していくという従来の基本的な役割に加えて、持続可能性やウェルビーイング、包摂性やアクセシビリティといったミュージアムの社会的な役割が強調されるようになりました。
世界基準に基づき、日本の美術館もそういう方向に活動を広げていくべきですが、いまの日本の美術館組織は企業的な多機能組織になっておらず、限られた人数の学芸員への負荷が多すぎる。運営を多角化する改革をしなければいけませんね。
よく現代アートは「時代を映す鏡」だと言われます。そのため各時代の作品を読み解くプロセスを通じて、過去、現在、未来を見通しながら世界の構造を学ぶことが重要です。アートは美術だけではなく世界のあらゆることを語るわけですから、それをなるべく多くの鑑賞者に届けたいのであれば、美術館の機能としては社会を意識したものにならざるを得ません。
―JUMPのプロジェクトでは、地方美術館のキュレーターを採択されていますが、その意図があれば教えてください。
片岡:地方自治体の美術館では、なかなか海外出張が難しかったり、東京出張でさえ簡単じゃないという話を聞いていたので、少しでも経験を増やしてもらいたいという気持ちで公募しました。YCAM(山口情報芸術センター)、高知県立美術館、滋賀県立美術館と、なるべく地域が分散するようにも配慮しています。しかも、まだあまり国際プロジェクトに携わったことがなく、英語力はむしろJUMPで鍛えてもらいたい人を選びました。JUMPにちなんで言えば、地方美術館の持つ境界を超えてもらいたいんですよ。
森美術館20周年記念IACシンポジウム「美術館のサステナビリティとは?」:第2部「気候危機と新しい美術館の姿勢」|Mori Art Museum Symposium
言語化する力、俯瞰する視点、友達をつくること。クリエイターが世界で戦うために必要なもの
―では支援を受けるアーティストやキュレーターたちが、世界で活躍するために必要なスキルについてはどうお考えですか?
土居:やっぱり一番大事なのはコミュニケーションの能力かもしれません。もう少し噛み砕いていくと、同じ人間同士という対等な関係性でコミュニケーションを取る気持ちです。そうした付き合いを築けたうえでようやく、自分の作りたいもののビジョンをシェアし、共に仕事をしていくことができます。
千房:たしかにそうですね。もちろん作品が語る部分は大きいんです。決して言語能力だけではないんですが、ただ英語が得意な人はやっぱりうまくやってますよね(笑)。それに、日本では業界的にも社会的にも「アーティストは変人である」みたいなステレオタイプのイメージが根強くあるじゃないですか。でも欧米では、アーティストであっても自分のプランをプレゼンできるような成熟した社会性が求められます。
WAN公式YouTubeではプロジェクト参加アーティストのインタビューを公開中
―片岡さんはいかがでしょう?
片岡:もちろんコミュニケーションやネットワーク作りは大切ですが、それが目的ではありません。アートを通じてどんな世の中にしたいのかといった大きなビジョンを共有することが大切だと思います。あと、SNSだけの交流は大したつながりになりません。私が国内外問わず重視するのは、一緒にいい仕事をしてお互い信頼関係を築き、将来的にまた仕事をしたいと思えるような関係です。世界中に張り巡らされてきたそういうネットワークがとても重要です。
1990年代以降、世界がグローバル化していくなかで、アートシーンは全体像を把握するのが不可能なほど複雑になっていきました。世界各地に美術館や芸術祭やアートフェアがあるわけですが、若いアーティストやキュレーターは、そんなアートの世界を成立させる構造を俯瞰的な視点から理解する必要があります。自分の軸となるスタイルを作るためにも、どういう選択肢があるのか、まず世界を見渡してみるといいんじゃないでしょうか。
「地球全体を探索してみるような気持ちでいい」。クリエイターに向けたメッセージ
―最後に、海外挑戦を意識しながらまだ実践できていない、クリエイターをはじめ文化芸術を担う人々の背中を押すようなメッセージをお願いします。
土居:日本で満足のいくキャリアを過ごせていれば、海外に出る必要は特にないと思いますよ。でも一方で、海外に出れば少し言葉を工夫するだけで話の通じる人たちが一気に増えます。それは、人生における選択肢が増えるということでもあります。僕自身もそうした経験からホッとしたところがあって、だいぶ自分の人生が楽になりました。物理的に遠い場所にも、自分と同じようなことを考えてる人がいるんだなって。NeW NeWの作家たちにも「友達を探しに行ったらいい」という話をすることがあるくらいです。
千房:本当に友達は重要ですよね。それに若いうちのほうが友達になりやすい(笑)。あとはインターネットですね。変な話、僕らがネットアートを始めた90年代後半って、まだインターネット自体が未発達だった。でも、逆にいまより近い距離感で世界の人たちと交流できていたんです。
ソーシャルメディアの時代になってから、速度が上がったので言語の壁が立ち、視野がドメスティックになったのを感じています。ただ、今度はAIの時代になったら、逆に翻訳のスピードも問題なくなってきたわけです。どんどん海外へのアプローチがやりやすい状況になってきているので、みなさん若いうちから世界とのコミュニケーションにチャレンジしていったら面白い。
赤岩:もちろんお金の問題でなかなか海外に出てこれない人も多いだろうけど、とにかく同志を見つけることが重要です。上下じゃなくて横のつながりが重要。その意味で、私も「友達」を作るべきだと思います。
片岡:海外に行くといくらでも知らないことがあって、新しい知識に出会うことができるので、好奇心旺盛な人にはぴったり。世界には本当に多様な文化があって、それを人類が発展させてきたんだと実感するためには、一度外に出てみるといい。私はそうしてきたことによって、自分の小さな人生が本当に豊かなものになったなと感じています。一言で言えば、「楽しいから行ってごらん」(笑)。地球全体を探索してみるような気持ちでいいと思いますよ。
- プロフィール
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- 片岡真実 (かたおか・まみ)
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1965年愛知県生まれ。2003年より森美術館、2020年から館長。国際美術館会議(CIMAM)理事・会長を務めたほか、光州ビエンナーレ(2012年)、シドニー・ビエンナーレ(2018年)、国際芸術祭「あいち2022」など国内外の国際芸術祭で芸術監督を歴任。2027年にはヘルシンキ・ビエンナーレを共同キュレーション。2023年に国立アートリサーチセンター初代センター長に就任。2026年度から国立アートリサーチセンター エグゼクティブ・アドバイザー。
- exonemo (エキソニモ)
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千房けん輔と赤岩やえによるアートユニット。1996年よりインターネット黎明期からネットアート作品を手がけ、2000年以降は実空間での展示にも活動を広げ国内外の展覧会やフェスティバルで作品を発表している。2006年には世界最大のメディアアートのコンペティション「プリ・アルスエレクトロニカ」でゴールデン・ニカ(大賞)を受賞。2015年よりニューヨークを拠点に活動している。
- 土居伸彰 (どい・のぶあき)
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1981年東京都生まれ。株式会社ニューディアー代表、ひろしまアニメーションシーズン(ひろしま国際平和文化祭 メディア芸術部門)プロデューサー。アニメーションの研究者としてキャリアをスタートし、インディペンデントをサポートする会社ニューディアーを立ち上げる。長編作品の劇場配給やイベント企画などを通じて世界の現代アニメーション作品を精力的に紹介。近年はプロデュース業にも力を入れ、国際共同製作による作品製作にも携わる。著書に『個人的なハーモニー ノルシュテインと現代アニメーション論』(日本アニメーション学会賞受賞)、『21世紀のアニメーションがわかる本』、『新海誠 国民的アニメ作家の誕生』など。プロデュース作『普通の生活』(水尻自子監督)は第75回ベルリン国際映画祭短編コンペで銀熊賞を受賞。
- 展覧会情報
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「Sleeping in the 22nd Century (二十二世紀の睡眠法)」 遠藤薫(アーティスト)・荒井保洋(キュレーター、滋賀県立美術館) 会期:2026年11月7日~2027年1月31日 会場:ニュー・サウス・ウェールズ州立美術館(オーストラリア・シドニー)「Sanitary Fables(衛生寓話)」 青柳菜摘(アーティスト)・見留さやか(キュレーター、山口情報芸術センター[YCAM]) 会期:2026年11月28日~2027年1月4日 会場:CAM ―グルベンキアン・モダンアートセンター(ポルトガル・リスボン)「セイ/SE-I/SAY」 MES(アーティスト)・塚本麻莉(キュレーター、高知県立美術館) 会期:2027年2月25日~3月7日 会場:ロサンゼルス現代美術館(アメリカ・ロサンゼルス)
- サイト情報
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クリエイター支援基金 文化庁の補助金により日本芸術文化振興会に設置された基金。国内外で活躍するクリエイターの育成およびそのための文化施設の機能強化を弾力的かつ複数年にわたって支援している。令和7年度からは、教育機関や企業・関係団体による育成プログラムの構築・実践を支援する「クリエイター等支援事業(育成プログラム構築・実践)」もスタート。このほか、経済産業省の補助金による「クリエイター・事業者海外展開促進事業」も行われている。
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