コラム

2019年に心を動かした作品は? カルチャーアンケートを発表

2019年に心を動かした作品は? カルチャーアンケートを発表

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CINRA.NET編集部

【映画】読者アンケート結果

■最も票を集めた映画:『宮本から君へ』

■アンケートで寄せられたその他のキーワード:『愛がなんだ』、『ジョーカー』

『宮本から君へ』©2019「宮本から君へ」製作委員会
『宮本から君へ』©2019「宮本から君へ」製作委員会

昨年にテレビ東京でドラマ化された新井英樹による同名原作マンガ『宮本から君へ』が、今年は映画になって登場。蒼井優、池松壮亮のW主演と真利子哲也監督という鉄壁の布陣でとことんまで貫かれた熱が、スクリーンから客席に確かに伝染していったのだろう。同作への助成金の内定取り消しについては、未だ議論が続いている。『愛がなんだ』は角田光代の原作小説と恋愛映画の旗手、今泉力哉監督のあまりに幸福なタッグ。岸井ゆきの演じるテルコと、成田凌演じるマモルを通して「好きとは?」とゆらぎ続ける時間を通して「世の中は割り切れることばかりではないよね」と、どこか安心したような気持ちになったのは私だけだろうか。バットマンの宿敵が誕生するまでを独自のストーリーで描いた映画『ジョーカー』は、世界興行収入が1000億円を突破し、R指定映画として史上最高の記録を更新。同作がなぜここまで話題になったのか、CINRA.NETでは考察記事を掲載しているのでぜひご一読あれ。その他、国内映画としては『天気の子』『すみっコぐらし』などのアニメ映画が、国外映画としては『アベンジャーズ』シリーズや『スター・ウォーズ』の完結編や『ROMA/ローマ』に続くNetflix発作品である『マリッジ・ストーリー』なども話題を集めた。最後に、主人公が「自分を生んだ罪」で両親を訴える設定が話題を呼んだ『存在のない子供たち』、政権が隠そうとする権力中枢の闇に迫ろうとする女性記者と、理想に燃える公務員の道を選んだ若手エリート官僚の対峙や葛藤をオリジナルストーリーで描いた『新聞記者』、映画祭での上映中止騒動が物議を醸した『主戦場』なども、今年を象徴する1本としてよいのではないだろうか。日本の映画界をとりまく現状について、考える機会の多い1年だった。

【アート】読者アンケート結果

■最も票を集めた展示:『塩田千春展:魂がふるえる』

塩田千春にとって過去最大規模の個展『魂がふるえる』は6月から10月まで開催され、入館者数666271人で森美術館の歴代入館者数第2位を記録。会場に足を運んでいなくとも、赤い糸で埋め尽くされた空間の写真をSNSで観た人も多いのではないだろうか。同じ六本木の森アーツセンターギャラリーでは9月から11月まで日本では初となるジャン=ミシェル・バスキアの大規模な展覧会『バスキア展 メイド・イン・ジャパン』も開催。入場までに1時間以上の待ち時間が発生するほどの人気を集めた。そして今年のアートシーンを振り返る時、避けて通れないのが『あいちトリエンナーレ 2019』。8月1日に開幕し、2日後の8月3日に開催中止となった『表現の不自由展・その後』展や、補助金の不交付騒動についてはもちろん、開催前に参加アーティストの男女平等が打ち出されたことも大きな話題となった。今年一年を振り返ると、イケムラレイコ、岡上淑子、志賀理江子、最果タヒ、ソフィ・カルなど、女性アーティストの大規模個展が目立ったことに気がつく。このことは、いま美術界で起こっている意識の変化と無関係ではないはずだ。東京・日の出で「バンクシー作品らしきネズミの絵」が発見された1月から幾月が過ぎ、気がつけば東京オリンピックは目前まで迫ってきている。2020年の東京オリンピックと2025年の大阪万博に向けて企画された『un/real engine - 慰霊のエンジニアリング - 』展、そこで飴屋法水が示した「なぜか、生きている」という言葉を、来場者はどのように受け取ったのだろう。想像力を絶やさず、その芽を不当に摘まれないための工夫を考える時、きっとまだ美術の力がヒントになるはずだ。

【舞台】読者アンケート結果

■票を集めた舞台:鵺的『悪魔を汚せ』、木ノ下歌舞伎『娘道成寺』、DULL-COLORED POP『福島三部作・一挙上演』

脚本家・高木登によるオリジナル作品を上演する演劇ユニット「鵺的(ぬえてき)」の舞台『悪魔を汚せ』が上位に上がった。3年前の初演時にも人気を集めた本作は、寺十吾を演出に迎えての再演。製薬会社の創業家一族・美樹本家に起きる、血縁がもたらす家族の争いを描き、著名人からも多くの好評を得て、話題となった。この他、木ノ下裕一が京都を拠点として主宰する、木ノ下歌舞伎による「歌舞伎舞踊」、『娘道成寺』や、「演劇でしかできないこと」を追求し続ける演劇集団DULL-COLORED POPによる『福島三部作・一挙上演』は、福島の原発事故を政治・経済・地域の問題を切り取った。

【書籍】読者アンケート結果

■票を集めた書籍:ヤマシタトモコ『違国日記』、伴名練『なめらかな世界と、その敵』、谷川俊太郎、岡野大嗣、木下龍也『今日は誰にも愛されたかった』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』
ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

『マンガ大賞 2019』で第4位、『このマンガがすごい!2020』オンナ編で第10位を獲得したヤマシタトモコの漫画『違国日記』は、一部で「漢方漫画」(参照:まんが王国ラボ)とも呼ばれ、人気を集めている。人見知りの少女小説家・槙生(まきお)が、両親を亡くし親戚の間をたらい回しにされていた女子中学生・朝を勢いで引き取ってしまうところから始まり、女2人の生活が始まるのだ。人見知りでクールな槙生と、子犬のようだが、孤独を感じている朝との間の、静かで奇妙な生活を描く。この他、伴名練のSF短編集『なめらかな世界と、その敵』、12月19日に発売されたばかりの、谷川俊太郎と、歌人である岡野大嗣・木下龍也3名による連詩『今日は誰にも愛されたかった』、ある底辺中学校で起こる、差別、ジェンダー問題、貧富の差の問題のような、社会をミニチュアにしたような作品が人気の、ブレイディみかこによる『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』など多種多様な作品が上がった。その他、1933年創刊の『文藝』が大幅リニューアルを行ない、2019年秋季号特集『韓国・フェミニズム・日本』が創刊以来86年ぶりに3刷となるなどの明るいニュースも。

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