コラム

遠くに聞こえていた不穏な足音が少しずつ近づいてくる。そんな2010年代の最後を象徴するように、2019年は争いと混迷の色がより一層濃くなった1年だった。イデオロギーの対立、格差や差別、寛容ではなく分断ーー政治や経済の問題として片付けられない、一人ひとりの心に巣食う不安や怒りが世の中に溢れ出たこの時代の中で、アーティストたちはより積極的にそのことに向き合い、問題提起を行い、癒し、寄り添い、時に強力なハンマーで心のドアをノックしてくれた1年だった。それはこの後に続くテキストからも、感じ取っていただけるのではないかと思う。

今年は読者からの投票だけでなく、各ジャンルに専門性を持つ編集部員やライターの皆さんからも、「心を動かした作品」を紹介していただいた。どんなアーティストや作品に感動したのか? そこには正解もなければ上下もなく、ただただ、それぞれの「心が動いた」という素直な事実だけがある。体を動かさずとも、ご飯を食べずとも、自分の中に勝手にエネルギーが湧き上がる。心の栄養でありガソリンになるあなたにとっての宝物が、見つかりますように。

(メイン画像:キョウハナ)

目次

p1. はじめに、読者アンケート結果:音楽

p2. 読者アンケート結果:映画、アート、舞台、書籍

p3. 編集者&ライターアンケート:音楽

p4. 編集者&ライターアンケート:映画

p5. 編集者&ライターアンケート:アート

p6. 編集者&ライターアンケート:舞台

p7. 編集者&ライターアンケート:書籍、おわりに

はじめに

まず、今回のアンケート結果を発表する上で感謝しなければならない方々がいる。「新しい地図」のファンのみなさんだ。

2019年、音楽、映画、舞台、アートと、多方面で活躍した、稲垣吾郎・草彅剛・香取慎吾の活動をそれぞれにピックアップし、アンケートの拡散に多大なる貢献をしていただいた。ジャンルに縛られずマルチにカルチャーを発信し続ける彼らには感服するばかりで、その影響力の大きさは、結成からこれまでにもどんどんと高まっている。

■最も票を集めた「新しい地図」関連作品:映画『凪待ち』(香取慎吾)

■アンケートで寄せられたその他のキーワード:

稲垣吾郎:クリムト展(ナレーションを務めた)、映画『半世界』、舞台『君の輝く夜に』

草彅剛 :映画『台風家族』(草彅剛)、映画『まく子』、舞台『家族のはなし』

香取慎吾:展覧会『BOUM! BOUM! BOUM!』、舞台『日本の歴史』、”10%”

白石和彌がメガホンをとった『凪待ち』は、香取慎吾演じるギャンブル依存症の男が再起をはかろうとした地で事件に巻き込まれていく様子を描いた。また、同じく香取慎吾が10月1日に、事前予告なしに配信を行った”10%”は、消費税が10%になる当日であったこともこともあり、話題をさらった。4月23日〜7月10日に上野の東京都美術館で開催され、57万人が来場した大規模展『クリムト展 ウィーンと日本 1900』では、稲垣吾郎がナレーションを担当。稲垣による生音声ガイドの披露とトークセッションの際、CINRAでもレポート記事を書かせていただいた。

2000万円の銀行強奪事件を起こしてから行方不明になった両親の財産分与のため、事件から10年後に集まった鈴木家の人々の1日を描いた『台風家族』では、鈴木家の長男でどんな仕事も長続きしない小鉄役を草彅剛が演じた。また、西加奈子による児童文学作品を映画化した『まく子』では、小学生の息子を持つ、女好きでだらしない父親役を好演。どちらの作品でも「どうしようもない」男をリアルに表現した。

【音楽】読者アンケート結果

■最も票を集めた音楽:King Gnu

■アンケートで寄せられたその他のキーワード:The 1975、カネコアヤノ、折坂悠太、サカナクション、ヨルシカ

King Gnu
King Gnu

音楽ジャンルでもっとも多くの票を集めたのはKing Gnu。今年『紅白歌合戦』にも出場を決めている彼らの破竹の勢いは、あえて言葉で説明するまでもないだろう。過去のインタビューで「時代性を纏ってない音楽が大衆的な熱狂を生むのは不可能」と語ってくれた常田大希は今、その渦の中心で何を見つめているのだろう。昨年もっとも多くの票を集めたカネコアヤノも、King Gnuに次ぐ票数を獲得。髪をばっさり切って、約1年半ぶりの新作アルバム『燦々』をリリースした際の取材で、彼女は「『あなたに歌ってるよ』って言い切れるので、私は。」と断言した。お守りのような、栞のような、部屋にふりそそぐ西日のような彼女の歌を、まだまだ聴き続けていたい。昨年『ネット上の人間関係についての簡単な調査』を発表したThe 1975は今夏『SUMMER SONIC』で来日&ライブを披露。映像表現も味方につけて「ROCK AND ROLL IS DEAD, GOD BLESS THE 1975」と打ち出した渾身のパフォーマンスは、多くの人の脳裏に焼きついたことだろう。その他、“朝顔”が月9ドラマの主題歌に抜擢された折坂悠太や、80年代前半の世界観を再現した“忘れられないの”のMVが話題になったサカナクション、4月に1stフルアルバム『だから僕は音楽を辞めた』を発表し、6月にメジャーデビューを果たしたヨルシカなどが票を獲得。崎山蒼志、君島大空、長谷川白紙らの躍進や、台風の影響を受け、急遽会場を移して開催されたGEZANによる『全感覚祭』、NUMBER GIRLの再結成、星野源、Perfume、嵐、スピッツ、BUMP OF CHICKEN、サザンオールスターズらのサブスク解禁についても追記しておきたい。

King Gnu“白日”を聴く(Apple Musicはこちら

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