特集 PR

2020年のMETAFIVE評。その足跡と『環境と心理』で迎えた新局面

2020年のMETAFIVE評。その足跡と『環境と心理』で迎えた新局面

METAFIVE『環境と心理』
編集
山元翔一(CINRA.NET編集部)

「絶対的中心をあえて想定しないからこそ、METAFIVEは無限の可能性のなかでメタモルフォーゼし続けられる」テキスト:村尾泰郎

1stアルバム『META』は、そんなMETAFIVEの多面性が凝縮された作品だ。メンバー全員が曲のアイデアを提出。Aメロからサビまで通してデモテープとして提出する者もいれば、曲名と出だしだけを提出する者もいて、他のメンバーがその後の展開を膨らませた。誰かが入れた音を誰かが抜き、別の誰かが新しい音を入れる。どんどん曲がメタモルフォーゼするメタなレコーディングだった。それはスタジワークに精通していて、どんな変化球を打ち返せるツワモノ揃いだからこそできること。

METAFIVE“Maisie's Avenue”(作詞・作曲:LEO今井)を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

エレクトロファンクな“Don't Move”(作詞:LEO今井、TOWA TEI / 作曲:小山田圭吾、LEO今井、TOWA TEI)やYMOへのオマージュを感じさせるテクノ歌謡曲“Luv U Tokio”(作詞:TOWA TEI、LEO今井 / 作曲:砂原良徳、TOWA TEI)など多彩な曲が並び、どの曲にもメンバーそれぞれの顔が浮かぶほど個性が溶け合っている。

そんななかで、曲の方向性の指針となったのはYMOだったに違いない。多彩なリズムを取り入れたダンスミュージックであり、実験的で緻密に作り込まれた電子音楽であり、キャッチーなメロディーを持ったポップソングでもある(関連記事:2020年のYMO評 エキゾ、電子音楽、ポップスの視点から3人が紡ぐ)。

そんなYMOがもっていた絶妙なバランス感覚を21世紀にアップデートさせたMETAFIVEのサウンドは、日本のテクノの底力を感じさせた。

METAFIVE“Luv U Tokio”を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

『META』のレコーディングはメンバーに大きな刺激を与えたようで、『META』を発表した年に早くもミニアルバム『METAHALF』を制作。『META』に比べて曲数が半分だが、全曲リード曲になりそうなテンションの高い曲が並んでいて、メンバーがお互いに創作意欲を刺激していることが伝わってきた。そこで『META』以上に存在感を発揮しているのがボーカルだ。

METAFIVEはファンキーなLEOの歌声とメロウな高橋の歌声のツインボーカルにしたことでも曲に振り幅が生まれているが、そのコンビネーションにさらに磨きがかかっている。また、『METAHALF』の収録曲“Peach Pie”(作詞:TOWA TEI、LEO今井、砂原良徳 / 作曲:TOWA TEI、LEO今井、砂原良徳)で高橋が叩くドラムは、サディスティック・ミカ・バンド“怪傑シルバー・チャイルド”で叩いたフレーズで、というリクエストがテイと砂原からあったとか。

METAFIVE“Peach Pie”を聴く(Apple Musicはこちら

サディスティック・ミカ・バンド“怪傑シルバー・チャイルド”を聴く(Apple Musicはこちら

ベテラン揃いのMETAFIVEが手慣れたサウンドになっていないのは、バンドの中心にメンバーの憧れの存在=高橋がいるからだろう。自分たちが影響を受けたアーティストと音を作る喜び、そして、同じ音楽から影響を受けた仲間と音楽を作る連帯感が、METAFIVEのサウンドに新人バンドのような瑞々しさと勢いを生み出している。

METAFIVE“Gravetrippin'”(作詞:LEO今井 / 作曲:ゴンドウトモヒコ)を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

『METAHALF』以降、忙しいメンバーはソロワークに集中していたが、今年7月24日に突然、4年ぶりの新曲“環境と心理”がリリースされた。METAFIVEにとって初めての日本語タイトルになったこの曲は、小山田が初めてメインボーカルを担当。作詞・作曲が小山田一人というのも初めてだ。その背景には、『METAHALF』の翌年にCorneliusが発表した11年ぶりの新作アルバム『Mellow Waves』(2017年)が、歌を聴かせる作品であったことが少なからず関係しているようにも思える。

間違いなくメンバー全員が『Mellow Waves』を聴いているはずで、あのアルバムにあったセンシティブさが“環境と心理”からも感じられる。曲の構造やメロディーはCornelius的だが、そこにポップな音の装飾や複雑なビートが加わり、小山田の歌声を支えるように高橋とLEOの歌声が重なるとさらにMETAFIVEらしくなる。音と声が寄り添うことの温もり。それはこれまでのMETAFIVEにはなかった感触だ。

3人の歌声はいつになくシリアスで、そこには混沌としている今の世界がよい方向へとメタモルフォーゼしていくことを願う気持ちが込められているようにも思えた。そして、これがMETAFIVEの新たな変化の予告編なのかも気になるところ。今後のバンドの動きに注目していきたい。

Page 2
前へ 次へ

リリース情報

METAFIVE『環境と心理』
METAFIVE
『環境と心理』

2020年7月24日(金)配信

プロフィール

METAFIVE
METAFIVE(めたふぁいぶ)

高橋幸宏×小山田圭吾×砂原良徳×TOWA TEI×ゴンドウトモヒコ×LEO今井。それぞれが日本の音楽シーンに特別で、独特な存在を築いてきたレジェンドの集合体である、まさに夢のバンド。2014年1月に六本木EX THEATERのオープニング企画として行われた、「高橋幸宏&METAFIVE」としての一夜限りのスーパー企画として結成され、その後不定期に活動を続行。2016年1月にオリジナルアルバム『META』をリリース。同年8月には、アルバム発売直後に行われたEXシアター六本木でのライヴを全曲完全映像化した作品『METALIVE』を、11月にはオリジナル曲5曲を収録したミニアルバム『METAHALF』を発売。2020年7月、約4年ぶりとなる新曲『環境と心理』をリリースした。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

あらかじめ決められた恋人たちへ“日々feat.アフロ”

何かを我慢することに慣れすぎて忘れてしまいそうになっている「感情」を、たった10分でこじ開けてしまう魔法のようなミュージックビデオ。現在地を確かめながらも、徐々に感情を回転させていくアフロの言葉とあら恋の音。人を傷つけるのではなく、慈しみ輝かせるためのエモーションが天井知らずの勢いで駆け上がっていった先に待ち構えている景色が、普段とは違ったものに見える。これが芸術の力だと言わんばかりに、潔く堂々と振り切っていて気持ちがいい。柴田剛監督のもと、タイコウクニヨシの写真と佐伯龍蔵の映像にも注目。(柏井)

  1. 2003年生まれのLAUSBUBが語る 人生を変えたテクノとの出会い 1

    2003年生まれのLAUSBUBが語る 人生を変えたテクノとの出会い

  2. アニメと共振するテン年代のUSラッパーたち。響き合う作品世界 2

    アニメと共振するテン年代のUSラッパーたち。響き合う作品世界

  3. B'zが松本隆トリビュートアルバムで“セクシャルバイオレットNo.1”カバー 3

    B'zが松本隆トリビュートアルバムで“セクシャルバイオレットNo.1”カバー

  4. 窪塚洋介×太田信吾 肛門へ射し込む希望の光。健康と生活を考える 4

    窪塚洋介×太田信吾 肛門へ射し込む希望の光。健康と生活を考える

  5. Adoが歌唱出演 タマホーム新CM「ハッピーソング Ado篇」放送開始 5

    Adoが歌唱出演 タマホーム新CM「ハッピーソング Ado篇」放送開始

  6. 中川政七商店と隈研吾がコラボ 『Kuma to Shika』全10アイテム限定販売 6

    中川政七商店と隈研吾がコラボ 『Kuma to Shika』全10アイテム限定販売

  7. レイ・ハラカミ没後10年 プラネタリウム作品『暗やみの色』を再上映 7

    レイ・ハラカミ没後10年 プラネタリウム作品『暗やみの色』を再上映

  8. YOASOBI×ユニクロ「UT」のコラボTシャツが7月販売 無料配信ライブも 8

    YOASOBI×ユニクロ「UT」のコラボTシャツが7月販売 無料配信ライブも

  9. ヒップホップ・南米音楽との融合『NOMAD メガロボクス2』 9

    ヒップホップ・南米音楽との融合『NOMAD メガロボクス2』

  10. 黒人ゲイ男性として生きる人々描く記録映画『タンズ アンタイド』無料配信 10

    黒人ゲイ男性として生きる人々描く記録映画『タンズ アンタイド』無料配信