21世紀の女子解放論 もっともっと、気持ちいい毎日を

21世紀の女子解放論 もっともっと、気持ちいい毎日を 第2回 エリイ(Chim↑Pom)

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21世紀の女子解放論 もっともっと、気持ちいい毎日を

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エリイ
(Chim↑Pom)

Chim↑Pom・エリイ、自身の結婚式や帰還困難区域を
アートに変える理由とは?

女の欲望解放論を掲げるこの連載。第2回目は、アーティスト集団・Chim↑Pomから、紅一点エリイをお招きした。

社会と都市に痛烈な批判と激烈な笑いのセンスで介入するChim↑Pomは、男5人とエリイで構成されている。あまりにも個性的な男性メンバーを時に叱咤し、また時にリードするエリイは、いかなる心構えでアート表現に立ち向かっているのか。そこには、21世紀を生き延びるための女の生き方が垣間見えるかもしれない。

昨年、電撃結婚したエリイ。その結婚式すらもアート作品としてしまった彼女に、都内某所の隠れ家風居酒屋でインタビューした。

テキスト:島貫泰介 撮影:豊島望 場所提供:園子温アトリエ
エリイ(Chim↑Pom)

エリイ

現代美術作家。2005年に結成したアートティスト集団「Chim↑Pom」のミューズ。Chim↑Pomは、時代のリアルに反射神経で反応し、現代社会に全力で介入した強い社会的メッセージを持つ作品で知られ、世界中の展覧会に参加。海外でもさまざなまプロジェクトを展開し、2015年にはアジアの若手作家を表彰する『プルデンシャル・アイ・アワード』で大賞に選出された。2014年6月に初の写真集『エリイはいつも気持ち悪い』を発売し、7月にはChim↑Pomの新プロジェクトとして、ショップ兼オフィス「KANE-ZANMAI」をオープンさせた。

Chim↑Pom official site ElliE official site

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エリイの結婚観とは?
「やったことがないことをやりたい欲求が強い」

2014年1月にエリイさんは結婚されましたね。「めでたい!」と思う一方、「Chim↑Pomのエリイが結婚!?」という驚きも大きかったです。

エリイ(Chim↑Pom)

「付き合おうよ」って言われたから付き合って、1年したら「結婚しようよ」って言われたから結婚した。以上。

エリイ:そうですか?

現代社会を芸術で挑発するChim↑Pomの活動を知る者としては、表現のためにどんどん突き進んでいくというイメージがエリイさんにありました。ぶしつけな質問ですけど、なんで結婚したんですか?

エリイ:結婚した理由……愛じゃないですか? 夫を愛しているから。「結婚しよう」と言われ、結婚した。以上。

旦那さんの手塚真輝さんとの馴れ初めを聞いてもいいですか? 歌舞伎町の有名ホストで経営者ですよね。

エリイ:そうです。最初の出会いは、歌舞伎町のロボットレストランに行ったら彼がいたんですよ。

ロボットレストランは2012年のオープンですから、けっこう最近の話ですね。

エリイ: 出会って1年で結婚したんで。最初の日は、新宿ゴールデン街で1杯呑んだくらいだったんですよ。その2日後、呑んでたら「バーに来い」と友達から電話で呼び出されて。行ったら彼がいて、「付き合おうよ」って言われたから付き合って、1年したら「結婚しようよ」って言われたから結婚した。以上。

コンパクトですね(笑)。例えば、アーティスト同士のカップルだと、「愛があっても結婚しなくていいじゃん」って考え方の人も多いと思うんですよ。だから、外からの印象だと「思い切ったな!」と。

エリイ:なるほど。ところで、この中で結婚してる人!?

(挙手ゼロ)

エリイ:まあ別に結婚はしなくてもいいと思う。私はやったことがないことをやりたい欲求がすごく強いんですよ。うちのお母さんは結婚してるし、身近に結婚したことある人がたくさんいるのに、私がその経験を踏まないというのは許せないというか。それが大きい動機かもしれないですね。

結婚に至るまでにドラマはありましたか? 心の揺れ動きとか。

エリイ:苗字が変わることに抵抗はありましたが、他はそんなにはないです。私ってニーズに応えたいタイプなので。

それは他の人からのニーズに?

エリイ:うん。「付き合おうよ」って言われたら、付き合うかな。私のことを好きな人が好きなんですよ。

実際に結婚してみてどうでしたか?

エリイ:めっちゃ優しいですね。私の展覧会とか応援してくれるし、海外で作品発表があったら必ず来てくれるし。心強いですよね。何かあったら「夫に言ってください」「夫が支払います」みたいな(笑)。

たしかに心強い(笑)。精神的な心強さもありますか?

エリイ:精神的なところではそんなに変わらないですね。逆に束縛もないですし。「何かをするな」って言われたことは1度もないです。

ベストパートナーじゃないですか!

エリイ:そうですね。

一般的な結婚式は「茶番」
路上で式を挙げ、Chim↑Pomとして作品化

結婚式デモの写真
撮影:篠山紀信

人間らしい営みこそが、人の脈々と受け継がれてきたベースなんじゃないですか?

Chim↑Pomは、エリイさんの結婚式を『Love is Over』という作品にしています。歌舞伎町の風林会館で朝まで披露宴をやって、翌朝新宿を結婚パレードならぬ、結婚デモをするという。デモなので警察の監視付きでした(笑)。

エリイ:Chim↑Pomで、私が今まで撮りためた写真集を作ろうって話してたタイミングで結婚することになったんですよ。それでメンバーと相談して、単に作品集を作るよりは結婚式を作品にしたほうが面白いから、写真集にしてしまおうと。

篠山紀信とレスリー・キーが撮影担当という豪華な結婚パレード。

エリイ:新しい結婚式の提示をしたかったんですよね。だから、最初から結婚式場でやろうとはさらさら思ってなかった。でも、式の4日前までウェディングドレスのことをきれいさっぱり忘れていて。

忘れてたんですか!?

エリイ:とりあえずウェディングドレス場に行って、「4日後に借りたいんですけど」って言ったら、「え!? 何言ってんの?」みたいな感じで突き返されて、「1年後じゃないと無理です」って言われて。見るに耐えられるドレスは、借りるのに100万円くらいするし。

高い! それでドレスをゴミ袋で手作りした?

エリイ:そう。友達に相談して、Chim↑Pomのメンバーと一緒に、夜な夜なゴミ袋とガムテープで作った(笑)。

結婚式を作品にしようと思った理由は何ですか?

エリイ:結婚式ってほぼ茶番じゃないですか。たまに超いい結婚式もあるけど。友人代表として出てきた人が手紙を読んだりするけど、「実際はそんなに仲よくないじゃん」とか。何のためにやっているのかわからない。自己満足のためなのですかね?

システム化されているのが嫌?

エリイ:儀式的なものはあった方がいいと思うんですけど。でも、誰にも知られずにひっそり結婚すると離婚する確率が高いって言うじゃないですか。だから、「結婚しました」と家族や友人に伝えるのはいい。結婚はパブリックなものだから。でも、それをやるためには自分の家でもいいし、公園でもいいし、どこでやってもいいじゃないかと。狐の嫁入りだって、皇室のパレードだって路上。

たしかに今の結婚は制度に紐づけられすぎていますよね。

エリイ:結婚って本来は、「一緒に暮らそう、生きよう」って人と人とが決めることで、すごい人間らしいことですからね。そういう人間らしい営みこそが、人の脈々と受け継がれてきたベースなんじゃないですか?

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