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もっと流行ってもいい。想像を超えるコンテンポラリーダンス入門

もっと流行ってもいい。想像を超えるコンテンポラリーダンス入門

インタビュー・テキスト
萩原雄太
撮影:永峰拓也

学校のトイレで女子高生が狂ったように激しいダンスを見せる。amazarashiの2ndシングル”スピードと摩擦”のMVで

振付を手がけたのは、今、コンテンポラリーダンス界で大きな注目を集めるダンサー・川村美紀子だった。amazarashiの楽曲が持つ暴力的なまでのパワーと、焦燥感を象徴する激しい振付で鮮烈な印象を残したMVは、ネットでも大きな話題となった。

ところで、「コンテンポラリーダンス」とは何なのだろうか? 「コンテンポラリー=現代の」という言葉から見れば、今話題の川村美紀子の振付・ダンスは、まさに「コンテンポラリー」と言える。しかし、どのようなダンスが「コンテンポラリーダンス」なのか? と聞かれれば、説明は難しい。

今年、横浜で開催されたダンスフェスティバル『Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2015』でも、バレエやストリートダンスの公演とともに、カナダのダンスカンパニー、カンパニー・マリー・シュイナールや、森山未來による『JUDAS, CHRIST WITH SOY ユダ、キリスト ウィズ ソイ~太宰治「駈込み訴え」より』、パリオペラ座でも活躍する勅使川原三郎の『ミズトイノリ - water angel』など、コンテンポラリーダンスと呼ばれるさまざまな作品がプログラムされた。

そんなコンテンポラリーダンスに、どうして人々は魅了されるのだろうか? そこで、今回は川村美紀子とともに、「ストリートダンスとコンテンポラリーダンスの融合」を掲げるDAZZLEの長谷川達也、amazarashiのMVで川村を起用したクリエイティブディレクターの本山敬一に、コンテンポラリーダンスの魅力についてたっぷりと語ってもらった。

……すごい。今の話、私も「コンテンポラリーダンス」がよくわかっていなかったので、とてもためになります。(川村)

―今日は「コンテンポラリーダンス」をテーマとした鼎談ということで集まっていただきました。ただ、一言で「コンテンポラリーダンス」といっても、定義や解釈がまちまちで、「これがそうだ!」ということが言えないジャンルですよね。

長谷川:僕自身も、コンテンポラリーダンスってそもそも何かわからない部分があります。ダンスのジャンルには頓着がないのですが、もともとヒップホップが好きでダンスを始めて、ジャズダンスのよさや、さまざまなダンスのよさを取り入れながら踊ってきました。そんなときに、誰かから「コンテンポラリーダンサーですよね?」って言われたんです。「ストリートダンサー」という自負はあったんですが、「コンテンポラリー」と言われたのは初めて。それで「コンテンポラリーダンスって何だろう?」と思って調べたのが、このジャンルとの出会いですね。

左から:長谷川達也、川村美紀子、本山敬一
左から:長谷川達也、川村美紀子、本山敬一

―実際に調べてみて、「コンテンポラリーダンサー」と言われたことには納得できましたか?

長谷川:あるイベントで舞踊家・振付家の杏奈さんと意気投合して、一緒に作品を作ることになったんですが、ワークショップに参加し、ストリートダンスとは異なった方法でダンスが作られていくのを見て、コンテンポラリーダンスと言われたことがようやくつかめたような気がしました。ストリートダンスには、ある程度決まったステップがあり、それを組み合わせてダンスにする。けれど、コンテンポラリーの場合には「存在していない身体の動き」を組み合わせることでダンスにしていきます。ダンスに対する捉え方、発想の方法が、より自由なんです。そんなコンテンポラリーの自由な部分と、僕がジャンルに頓着せずに踊っていたこととの共通点を感じましたね。

川村:……すごい。今の話、私も「コンテンポラリーダンス」がよくわかっていなかったので、とてもためになります。録音してスピードラーニングの教材にしたいです……。

一同:(笑)。

DAZZLE『第七回公演 SHADOW GAME』より
DAZZLE『第七回公演 SHADOW GAME』より

長谷川:川村さんもストリートダンスをやっていたんですよね。

川村:クラブに行って、わーって踊っていました。今はいろいろな優しい人が「おいでおいで」って、コンテンポラリーダンスの世界に招いてくれているような感じです。

―川村さんは『トヨタコレオグラフィーアワード』や、『横浜ダンスコレクションEX 2015』といった、コンテンポラリーダンスの賞を数々獲得していますが、自分ではコンテンポラリーダンスを踊っている自覚はない?

川村:そうですね……。もともとは「ヤスダ」に通って、ダンスを教えてもらっていたんです。

―「ヤスダ」って何ですか?

長谷川:ストリートダンス界で知らない人はいない、新宿にある損保ジャパン日本興亜本社ビル(旧・安田火災海上本社ビル)の通称です。1Fの大きなガラスが鏡のように映るので、いろんなダンサーが練習で集まっていたんです。

―なるほど(笑)。ストリートダンスから、いつの間にかコンテンポラリーダンスに越境してしまっていた川村さんにとって、コンテンポラリーダンスの魅力ってなんなのでしょうか?

川村:うーん……、「コンテンポラリーダンスの魅力」というテーマをもらって考えていたんですが、それを話すこと自体が、すでにコンテンポラリーではないと思います。だって「現在」って言ったら、すでに過去のことになってしまいますよね。「コンテンポラリー」って呼ばれること自体が、すでに過去の扱いのような気がする……。

―「コンテンポラリー」は、辞書通りには「現代の」という意味ですが、川村さんは、まさに「今、この瞬間」に作りだすイメージを持っているということですね。では、踊る立場ではなく、観る立場である本山さんはいかがでしょうか?

本山:2005年頃から観始めました。もともとは中原昌也のようなノイズミュージックが好きで、彼が「BABY-Q」(関西出身のダンサー・東野祥子が主宰するカンパニー)のサウンドを手がけていたのがきっかけです。それ以前も、映画に出てくる暗黒舞踏のようなものは観ていましたが、ちゃんとお金を払って公演に足を運んだのはそれが最初ですね。

―ダンスのどのような部分におもしろさを見出したのでしょうか?

本山:現代音楽やノイズミュージックって、一聴すると音楽に聴こえないものが多い。けれども、60分間どわーっと聴いていると、1秒くらいだけ音楽に聴こえる瞬間があるんです。その「1秒の強度」のほうが、ポップで耳触りのいい音楽を聴いているときよりも「おお!」と感動するんです。聴いているときはぶっちゃけ「はやく帰りたい……」と思っているんですが(笑)、後々まで記憶や体験として残るのは耳触りのいい音楽ではなく、ノイズの中の1秒なんです。同様に、コンテンポラリーダンスを観ていても、なんだかよくわからない動きをしていることがほとんどなのに、めちゃくちゃかっこいい瞬間があります。それは、解釈する側の問題なのかもしれないけど、踊りに見えないものが踊りに見える瞬間みたいなのが、すごくかっこいいなって思って観ています。

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イベント情報

『Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2015』

2015年8月1日(土)~10月4日(日)
会場:神奈川県 横浜市内全域

クラシックバレエ、コンテンポラリーダンス、ストリートダンス、社交ダンス、チア、日本舞踊などジャンルを横断した200以上のダンスプログラムが横浜市で展開。国内外のアーティストによる公演に加え、ダンスパレードやワークショップなど参加型プログラムも数多く用意されている。

『カンパニー マリー・シュイナール 日本ツアー2015』

2015年10月24日(土)~10月25日(日)全2公演
会場:神奈川県 日本大通り KAAT神奈川芸術劇場
料金:一般7,000円 U24 3,500円 セット券10,000円(デボラ・コルカー公演と2演目セット券)

デボラ・コルカー・カンパニー
『Belle』

2015年10月31日(土)~2015年11月01日(日)
会場:神奈川県 日本大通り KAAT神奈川芸術劇場
料金:一般7,000円 U24 3,500円 セット券10,000円(カンパニー マリー・シュイナール公演と2演目セット券)

イベント情報

『ダンス映画特集@シネマ・ジャック&ベティ』

2015年10月31日(土)
会場:神奈川県 シネマ・ジャック&ベティ
料金:一般1,800円 大専1,500円 小中高シニア1,000円(各作品、入れ替え制)

プロフィール

長谷川達也(はせがわ たつや)

DAZZLE主宰・ダンサー・演出家。SMAP、V6、Mr.Children、ケツメイシ、TRF、BoA、東方神起などのライブ出演・振付の他、振付日本一を決めるLegendTokyo、TheatriKA‘lコンテストのW優勝。また、国内演劇祭での最優秀作品賞、若手演出家優秀賞を始め、海外では韓国:アジア演劇祭、ルーマニア:シビウ国際演劇祭の他、中東最大のファジル国際演劇祭からの招聘、4部門ノミネート、2部門において受賞。本年3月には歌舞伎界の立女形にして人間国宝である坂東玉三郎氏演出舞台『バラーレ』(東京・赤坂ACTシアター)にDAZZLEとして主演。振付も担当。現在は来年秋に予定しているDAZZLE結成20周年舞台公演に向け鋭意制作中。11月7日(土)に東京・東銀座にある東劇にて「DVD『二重ノ裁ク者』発売記念プレミアム上映会」が開催決定。イープラスにてチケット発売中。

川村美紀子(かわむら みきこ)

1990年生まれ、16歳からダンスを始める。日本女子体育大学(舞踊学専攻)卒業。2011年より本格的に作品を発表し、2012年初演の『へびの心臓』は、国内外で上演を重ねている。その活動は、劇場にとどまらず、屋外やライブイベントでのパフォーマンス、映像制作、弾き語りライブ、自作品の音楽制作、レース編みなど、表現活動を多彩に展開。2014年『インナーマミー』初演、トヨタコレオグラフィーアワード 2014「次代を担う振付家賞」及び「オーディエンス賞」、横浜ダンスコレクション EX 2015「審査員賞」及び「若手振付家のための在日フランス大使館賞」を受賞。

本山敬一(もとやま けいいち)

1977年倉敷生まれ。SIX所属。クリエイティブディレクター。"A Fusion of Technology with Humanity"をテーマに、メディアを問わず人の心に残る体験をつくる。代表作にPokémon GOのトレーラ―、amazarashiのMV『季節は次々死んでいく』、Nexus 7のCM、Google Chrome 初音ミクなど。カンヌをはじめとした国内外のアワードで受賞多数。

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