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ラッキーオールドサンが歌う、「今」という時代を肯定する歌

ラッキーオールドサンが歌う、「今」という時代を肯定する歌

ラッキーオールドサン『Belle Époque』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影・編集:山元翔一

ずっと転がっていたい。転がっていかないと、見たことない景色にも出会えないですから。(ナナ)

―THE BLUE HEARTSの音楽にある、変わらない「核となる部分」って言葉にすることはできますか?

篠原:単純に音楽が好きということなんだと思います。人生を棒に振ってしまうくらい(笑)、音楽に対する純粋な想いというか。

―古い世代から新しい世代へ、「バトンを引き継いでいる」という気持ちはありますか? 自分たちの音楽を通して、古い音楽が聴き直されたり、それこそユーミンの『COBALT HOUR』が、若い人たちに聴き直され、再評価されたりしたら……という想いとか。

篠原:おこがましいですけど、そうなったらうれしいですね。僕らもくるりやASIAN KUNG-FU GENERATIONを聴いて、同世代の洋楽を聴いたり、そのルーツとなる音楽を紐解いたりしてきたので、ラッキーオールドサンの音楽が、そんなふうに他の音楽への窓口になれたらなによりです。

左から:篠原良彰、ナナ

―1stアルバムは、聖蹟桜ヶ丘の丘の上から街を見下ろしたような、そんな景色が視覚的イメージだとおっしゃっていました。平成を「ベルエポック」と読ませる予定だった本作は、どんな景色をイメージしながら作ったのでしょうか。

篠原:たとえば、歌詞のなかには「青梅駅」とか、福生の「ベースサイドストリート」とかそういう中央線沿いのフレーズが出てくるんです。“すずらん通り”は神保町の古本屋街のことですし、なので、東京を西から東に貫いている感じですかね。

あと、映像として浮かぶのは、御苑公園のような開かれた場所。そこで、小さい子とお父さんがサッカーしていたり、カップルが遊びに来ていたりしているイメージ。……ナナさんはどうですか?

ナナ:開かれた場所、というイメージは私もあって。具体的に言うと……自分の家族がいる場所かもしれない。今回のアルバムタイトルが『Belle Époque』となったときに、おばあちゃんの若いころのアルバムを見る機会があって。それで書いたのが、“写真”という曲なんです。私は当然、その時代には生まれてなくて、「いいなあ」と思う瞬間もあるけど、それでもやっぱり今自分たちがいる場所で生きていきたい、っていう気持ちがあって。

ナナ

篠原:そうだね。それに『Belle Époque』という大きなタイトルを借りて、「今を生きているのが一番いい」と断言して覚悟を見せたつもりなんです。それと同時に、聴いている人に対しても「今の時代が一番いいって言えますか?」と、問いかけたい気持ちもありました。それは、とても怖いことでもあるけど、でも大事なことなんじゃないかなと。

―そうだったんですね。「本来は馴染めないはずのところに、今の僕は身を置いている」と前回おっしゃっていたじゃないですか。それで今回、タイトルが「佳き時代」だし、回顧主義というか、ラッキーオールドサンの夢見心地な音楽は、どこか現実逃避的なものなのかと思っていたのですが、全く逆だったのですね。

篠原:ええ。「逃げきれないなら、戦うしかない」というか。

―そんな日常を、“Railway”や“すずらん通り”の<転がる日々>というフレーズで表現しているのですね。

篠原:そうです。ひとたびも同じところにはいなくて、常に転がっているような気がします。自分たちは「穏やかに生きたい」と願えば願うほど、曲がり角が多くなっているような気がしていて。

決して、「流されている」つもりはないのだけど、かといって全てを自発的に、力強く切り拓いているか? というと、それも違う。いろんな流れに押されながら、問答しながらもがいて、走ろうとするけど足がもつれて転がっている……そういうイメージに近いですね。

篠原良彰

ナナ:私も日々変化しているなと思っていて、それはそれでいいとも思っていますね。どういう方向に行くかはわからないけど、ずっと転がっていたい。転がっていかないと、見たことない景色にも出会えないですから。

音楽というのは、変わり続けるからこそ残っていくものでもあると思うし、「留まろう」と思って留まれるものはないと思う。(篠原)

―“さよならスカイライン”では、<なんとかなるさ これから 今まで どうにかやるさ>とも歌っていますね。転がる日々を肯定しているように聴こえます。

篠原:基本的に僕らは常にそういうことを歌っている気がしていて。それこそが、ラッキーオールドサンの最初期から、もしかしたらその前から、自分にとっての命題なんじゃないかと。人によっては、違う言葉や別のカタチだったりするのを、偶然僕らは「なんとかなるさ」と歌っているだけで。おそらくいろんな人たちが様々なカタチで、そういったことを伝えてきているような気がします。

―たとえば?

篠原:そうだな……『般若心経』の「ギャーテーギャーテー……」のところ(正式には「ギャーテーギャーテーハーラーギャーテーハラソーギャーテーボージーソワカ」、「往ける者よ、往ける者よ、彼岸に往ける者よ、彼岸に全く往ける者よ、幸あれ」と訳される)とか。僕はよく「It's gonna be alright」というフレーズも多用するんですけど、それも昔からいろんな人たちがずっと使っていて。

それにTHE BLUE HEARTSも、同じことを歌ってきたような気がします。改めて言葉で解きほぐそうとすると、すごく難解に思えてしまうんですけど、こういうわかりやすいフレーズで歌にすることによって、そこに含まれる意味もダイレクトに伝えられるんじゃないかと。そう信じているところはあります。

『ラッキーオールドサン』収録曲

―なるほど。人が生きるということにおける、真理めいたものを1フレーズで切り取るというか。THE BLUE HEARTSが歌ってきた、変わらない「核となる部分」という意味では、先ほどの話にも通じるような気がします。

篠原:それに、音楽的に「常に新しいものを作らなくちゃいけない」というよりは、「ただ、いいものを作りたい」という想いでやっていて。自分たちが演奏していて楽しい音楽というのを大前提として考えているので、奇をてらったようなことをしたいとか、そういう気持ちは全くなくて。

―サウンド面でも、言葉の面でも、普遍的なものに対する憧れがあるんだろうなと、お話を聞いていてすごく感じます。

篠原:僕はイマイチ、「エバーグリーン」という言葉をまだ理解してはいないんですけど、もし普遍的なものがあるとしたら……うーん、でも難しいな。変な話、音楽というのは、変わり続けるからこそ残っていくものでもあると思うし、「留まろう」と思って留まれるものはないと思う。

ナナ:変わっていくほうが自然だと私は思います。

篠原:うーん、変わりたいんだけど、変われないところもある、みたいな感じなのかな。ちょっと矛盾したことを言ってますけど(笑)。

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リリース情報

ラッキーオールドサン『Belle Époque』
ラッキーオールドサン 『Belle Époque』(CD)

2017年4月12日(水)発売
価格:2,268円(税込)
ARTKT-014

1. さよならスカイライン
2. ベースサイドストリート
3. フューチュラマ
4. 写真
5. 夢でもし逢えたなら
6. ツバメ
7. I want you baby
8. すずらん通り
9. Railway
10. Tokyo City Brand New Day

イベント情報

『2nd full album『Belle Époque』Release Tour~佳き時代に生まれたね~』

2017年5月5日(金・祝)
会場:京都府 Live House nano

2017年5月6日(土)
会場:大阪府 HOPKEN

2017年5月7日(日)
会場:愛知県 名古屋 K.Dハポン

2017年6月3日(土)
会場:東京都 下北沢 SHELTER

2017年6月24日(土)
会場:宮城県 SENDAI KOFFEE CO.

プロフィール

ラッキーオールドサン
ラッキーオールドサン

ナナ(Vo)と篠原良彰(Vo,Gt)による男女二人組。ふたりともが作詞 / 作曲を手掛け、確かなソングライティングセンスに裏打ちされたタイムレスでエヴァーグリーンなポップスを奏でる。2014年12月にkitiより1stミニアルバム『I'm so sorry,mom』でデビューし、2015年7月には1stフルアルバム『ラッキーオールドサン』をリリース。詩と歌のシンプルなデュオ編成から、個性的なサポートメンバーを迎えたバンド編成まで、様々な演奏形態で活動を展開。輝きに満ちた楽曲の数々は多くのリスナーを魅了し、またその確かな音楽性が多くの同世代バンドからも熱烈な支持を得る。2016年4月にはカントリーやブルースといったルーツミュージックの匂いを纏った2ndミニアルバム『Caballero』をリリース。2010年代にポップスの復権を担うべくあらわれた、注目のポップデュオ。

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