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クラシック界の若きスター・反田恭平の魅力を湯山玲子が徹底解説

クラシック界の若きスター・反田恭平の魅力を湯山玲子が徹底解説

反田恭平『Clair de Lune〜Recital Pieces Vol.1』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:豊島望 編集:山元翔一、川浦慧
2017/08/10
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2015年にアルバム『リスト』をリリースし、「クラシック界の異端児」としてその名を轟かせた22歳の若きピアニスト、反田恭平。昨年は『情熱大陸』にも出演し、漫画『のだめカンタービレ』に触発されてサッカー少年からピアニストへと転向し、いわゆる「エリート教育」を受けずにピアノをマスターしたエピソードなどが紹介されると、お茶の間でもちょっとした騒ぎを巻き起こした。

そんな彼が、7月より全国13か所で行われる『反田恭平ピアノ・リサイタル2017 全国縦断ツアー』と完全連動した、いわゆる「先出しCD」をリリースする。『Clair de Lune~Recital Pieces Vol.1』と名付けられた本作には、ツアーで演奏予定の演目の中からピックアップした9つの曲目を収録。「難解」と言われているシューベルトの即興曲をはじめ、ラヴェルやドビュッシー、ショパンなどの代表曲にも挑んだ本作は、反田恭平の「現在進行形」を窺い知ることのできる内容と言えるだろう。

そんな反田の魅力にさらに迫るため、著述家 / プロデューサーの湯山玲子と反田との対談を行った。クラブミュージックを経てクラシックへと傾倒し、爆音でクラシックを聴くイベント『爆音クラシック(通称「爆クラ!」)』を定期的に主催している湯山は、反田の魅力をどう捉えているのだろうか。

反田くんは、クラシック界が久しぶりに生んだ「同時代性のあるスター」だと思います。(湯山)

―まずは湯山さんから見た、反田さんの凄さ、これまでのピアニストとどう違うのかを教えていただけますか?

湯山:反田くんは、クラシック界が久しぶりに生んだ「同時代性のあるスター」だと私は思います。若くして世に出てくるピアニストは、テクニシャンが当たり前。ただ彼らは、例えば『ショパン国際ピアノコンクール』を目指して小さい頃から英才教育を受けてきて、生活の全てがピアノしかない、という、いわゆる早期教育ピアノマシーン的な才能がほとんどなんですよ。特に、日本人のピアニストはその傾向が強い。彼らは「遊んでいる場合じゃない」と練習の鬼になるのですが、その「遊び」こそ、聴衆を感動させる感性を育む経験になるのに、そこをないことに、なしにしたがる、というか。演奏の善し悪しは、偏差値的なものではないんですよ。ピアニストだけでなく演奏家全般にも言えることなのですが、それは彼らが、受けた教育の仕組みにも原因があると思います。

―というのは?

湯山:明治維新から戦後まで、日本人は西洋に追いつけ追い越せでやってきて、発達した先進国である欧米文化の「権威」をもらうことは一流と認められるためのパスだと思ってきたわけです。コンクールやタイトル、試験に向かってとにかく一直線に稽古する。演奏家が本来向き合わなければいけないのは、クラシックファンをはじめとする聴衆であり、クラシックの歴史性であるはずなのに。反田くんは、そういう世界とは全く無縁のところからいきなり現れたんですよ。

湯山玲子
湯山玲子

―反田さんは、同期のピアニストたちと比べてご自身が異端だという自覚はありますか?

反田:そうですね。僕も音楽学校に通ってはいたのですが、とにかく周りは、真面目にストイックにピアノだけをやってきたような人ばかりでした。だから、昼食や休み時間になっても話が合わなかったですね(笑)。前の日のテレビ番組の話をしても通じないし、仲がよかった数名を除いては、友達づきあいは難しかった。

―これは偏見かもしれないですが、とにかくひたすら練習に打ち込んでいないと、一流のピアニストにはなれないものだと思っていました。

反田:いや、そんなことないんですよ。ロシアへ留学して思ったのは、ピアノが上手い人たちほど遊んでるということなんです。「遊んでいる」だと語弊があるかもしれないのですが、視野が広いんですよね。例えばトランプゲームが好きだったり、チェスを嗜んでいたり、料理が上手かったり。ピアノが上手い奴ほど他の分野にも長けているし、日々を謳歌しているんですよね。それは海外に行かなければ分からなかったかもれない。

今はピアニストであることにも全くこだわっていなくて、むしろ「ピアニスト」と呼ばれることに、ものすごく抵抗があるんです。自分は音楽家でありたいと思っているし、今後年齢を重ねていく中で経験が増えていったら、様々なプロジェクトに関わっていきたいですし、自分でプロデュースもしてみたいと思っていますね。

反田恭平
反田恭平

―反田さんが、そんなふうに日本の音楽教育の仕組みから自由でいられたのは何故でしょう。

反田:おそらく、初めて通ったミュージックスクールの先生のおかげですね。4歳の頃から通うだけ通ったんですけど、レッスンは2週間に一度、30分だけで、しかもそのうちの15分はただ話をするだけだったりして、とにかく楽しかったんです。課題曲もなく「好きな曲を持ってきて、好きなように弾いていいよ」と言ってくださって、上手に弾けると「花まる」をもらえる。小さい頃って、「花まる」をもらえるのがとにかく嬉しかったじゃないですか。そういうレッスンを12歳くらいまで続けていたのは大きかったかもしれない。

湯山:それはいい先生でしたね。12歳までソレをやっていたというのが重要。普通は7、8歳くらいでもう特訓が始まってしまうので。

左から:反田恭平、湯山玲子

―そういえば、昨年放送された『情熱大陸』で、湯山さんは反田さんのピアノを「エロい」と表現していたのが印象的でした。

湯山:それね、ちゃんと前後の文脈があった上での「エロ」なのに、テレビではそこだけ切り取られちゃうからさ(笑)。でも、確かにそう思うところがあって。音楽を聴いたときの心の動きって、いろいろな種類があると思うんですよ。例えば、古い記憶を喚起されるノスタルジアの場合もあれば、もっと根源的な感情……ムラムラするとかそういう性欲に近い感情や、恋をしたときの衝動が湧き上がることもある。そして、実はクラシック音楽のいい曲や演奏、というものは、絶対に感情、それも情動に近い熱と気配を連れてくる。反田君がイタリアのトリノで、若手指揮者のアンドレア・バッティストー二と録音した現場なんて、まさに、反田とバッティの「愛の交歓」ですよ。

―「愛の交歓」ですか。

湯山:あとこれは、私が主催するイベント『爆クラ!(爆音クラシック)』でも散々言っていることですが、日本人が音楽を聴くときって、実は音じゃなくて歌詞を聴いて感動している場合がほとんどなんですよ。日本語のポップスってほとんどが、そういう作りじゃないですか。歌詞をよりよく聴かせ、その行間をアレンジで表現する。

私はクラブミュージックからクラシックにハマっていったのですが、どちらもインストゥルメンタルですから、歌詞ではなく、音の運びや音色、演奏の微妙なニュアンスという、抽象的なものに心を動かされている。言葉の叙情性に頼らない、音の快感原則を追求するクラシック音楽は、構造美などのシステムの美しさがある一方で、触感とか、嗅覚などの皮膚の感性にも満ちている。そこが、「色っぽい」わけです。

―なるほど。

湯山:で、反田くんはそういう微細な音のニュアンスに向けて表現しようとしているところがある。鍵盤を「トーン」と叩くタイミングとか、その余韻の残し方が官能的。

あと「色気がある」ということで言えば、チャームというかポピュラリティーも彼にはあるでしょ? ピアスなんてして、髪を後ろでキュッと結んで、おまけにちょっと可愛い顔をしてる。そういう、外見のかっこよさも大切だと思うんですよ。異性も同性も惹きつけるというか。現代の若い演奏家は、一見こざっぱりしているけど、「その服、ママが選んだの? スタイリスト?」という人たちばかり。反田君の風体はそことは違う、自我と感覚の発露がありますよね。そりゃあ、モテるよ。

湯山玲子

一同:(笑)

湯山:ちなみに、ダヴィッド・フレイというピアニストは、私好み。彼もかっこいいですよね。「グールドの再来」なんて言われてて、ONE DIRECTIONのメンバーにいそうな、今どきのイケメン。YouTubeの時代になり、映像の時代になって、やっぱり今後はクラシック界も、容姿が大切な要素になってくると思う。

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リリース情報

反田恭平『Clair de Lune~Recital Pieces Vol.1』
反田恭平
『Clair de Lune~Recital Pieces Vol.1』(CD)

2017年6月21日(水)発売
価格:3,240円(税込)
COCQ-85364

1. I. アレグロ・モルト・モデラート
2. II. アレグロ
3. III. アンダンテ
4. IV. アレグレット
5.亡き王女のためのパヴァーヌ(ラヴェル)
6.喜びの島(ドビュッシー)
7.月の光 ~《ベルガマスク組曲》より 第3曲(ドビュッシー)
8.献呈(シューマン/リスト編)
9.別れの曲 ~《12の練習曲 作品10》より 第3曲(ショパン)
※HQ-CD仕様

ライブ情報

反田恭平ピアノ・リサイタル2017 全国縦断ツアー

2017年7月8日(土)
会場:神奈川県 ミューザ川崎 シンフォニーホール

2017年7月13日(木)
会場:静岡県 静岡音楽館AOI

2017年7月15日(土)
会場:愛知県 愛知県芸術劇場 コンサートホール

2017年7月21日(金)
会場:新潟県 長岡リリックホール コンサートホール

2017年7月28日(金)
会場:富山県 富山県教育文化会館

2017年8月3日(木)
会場:北海道 札幌コンサートホールkitara 大ホール(プログラムI)

2017年8月4日(金)
会場:北海道 函館市芸術ホール

2017年8月6日(日)
会場:福岡県 アクロス福岡 シンフォニーホール

2017年8月17日(木)
会場:岩手県 岩手県民会館 中ホール

2017年8月20日(日)
会場:福島県 福島市音楽堂

2017年8月26日(土)
会場:兵庫県 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール

2017年8月31日(木)
会場:秋田県 秋田アトリオン 音楽ホール

2017年9月1日(金)
会場:東京都 初台 オペラシティ コンサートホール(プログラムI)

『河口湖音楽祭2017 反田恭平のKIDSコンサート ~ピアノってどんな楽器!?』

2017年8月15日(火)
会場:山梨県 河口湖円形ホール

『河口湖音楽祭2017 ぱんだウインドオーケストラ2017』

2017年8月16日(水)
会場:山梨県 河口湖ステラシアタ-

プロフィール

反田恭平
反田恭平(そりた きょうへい)

1994年生まれ。2012年高校在学中に、第81回日本音楽コンクール第1位入賞。併せて聴衆賞を受賞。2013年M.ヴォスクレセンスキー氏の推薦によりロシアへ留学。2014年チャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院に首席で入学。2015年プロとしての第一歩を踏み出す。イタリアで行われている「チッタ・ディ・カントゥ国際ピアノ協奏曲コンクール」古典派部門で優勝。7月にはデビューアルバム「リスト」を日本コロムビアより発売。またCDのデビュー以前に東京フィルハーモニー交響楽団定期への異例の大抜擢を受け、ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 を熱演し、満員の会場で大きな反響を呼んだ。そして、年末には「ロシア国際音楽祭」にてコンチェルト及びリサイタルにてマリインスキー劇場デビューを果たす。2016年に開催したデビューリサイタルは、サントリーホール2000席が完売し、圧倒的な演奏で観客を惹きつけた。夏の3夜連続コンサートをすべて違うプログラムで行うも一般発売当日に完売し、3日間の追加公演を行い新人ながら3,000人を超える動員を実現する。コンサートのみならず「題名のない音楽会」「情熱大陸」等メディアでも多数取り上げられるなど今、もっとも勢いのあるピアニストとして注目されている。最新CDは11月に発売された、Aバッティストーニ指揮RAI国立交響楽団とラフマニノフのピアノ協奏曲第2番のセッション録音。現在、国内外にて演奏活動を意欲的に行っている。

湯山玲子(ゆやま れいこ)

1960年生まれ、東京都出身。著述家。文化全般を独特の筆致で横断するテキストにファンが多く、全世代の女性誌やネットマガジンにコラムを連載、寄稿している。著作は『四十路越え!』『ビッチの触り方』『快楽上等 3.11以降を生きる』(上野千鶴子との対談本)『文化系女子の生き方 ポスト恋愛時宣言』『男をこじらせる前に 男がリアルにツラい時代の処方箋』等々。クラシック音楽を爆音で聴くイベント『爆クラ!』と美人寿司主宰。

関連チケット情報

2017年8月13日(日)〜8月20日(日)
富士山河口湖音楽祭2017
会場:河口湖ステラシアター(山梨県)

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