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曽我部恵一インタビュー 引き伸ばされた日常、虚無感の先をめがけ

曽我部恵一インタビュー 引き伸ばされた日常、虚無感の先をめがけ

曽我部恵一『永久ミント機関』『LIVE IN HEAVEN』『戦争反対音頭』
インタビュー・テキスト
田中亮太
撮影:池野詩織 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

私たちはなぜ踊るのか、踊ることは生きるのに必要か? 音楽がもたらす快感、音と身体の関係からたぐり寄せて考える

―“永久ミント機関”は自分にとってリアリティのある音楽だと思いました。あの曲、10分近いじゃないですか。その長さが、1秒でも長く自分の気持ちを上げてくれたり、現実逃避させてくれたりするものがほしいなという今の気持ちにすごくフィットしたんですよね。

曽我部:その前に出した“Sometime In Tokyo City”は、フォークっぽいスタイルだったんだけど、15分あるからね。15分かけないと、歌いたいことを歌えなかったんです。あの曲の長さもしっくりきていますね。以前までだったら絶対15分の曲って奇をてらったものに映ったと思うんだけど、今はそうならない感じがちょっとあった。ひょっとしてこういうところに浸れる何かがあるのかなあ~と思ったり。

曽我部恵一“Sometime In Tokyo City”を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

大石:なるほど、浸れるものですね。たしかに僕もコロナ禍になってから、Grateful Deadばっかり聴いていた時期があって。

曽我部:(笑)

大石:しかもスタジオ版じゃなくて、1曲20分くらいあるライブバージョン。3分できっちり終わる世界観っていうものが、逆にキツくて狭いものに感じちゃったんだと思う。長い時間に浸ってそこで自分を解放するものに、もしかしたら自分なりのリアリティがあるのかな。

曽我部:なんかわかりますね。プログレじゃないけど、「あれ、はじまったのかな?」っていうようなイントロから徐々に曲になり、いろんな風景を見せてくれて、終わっていくっていう。Pink FloydやGrateful Deadとか、そういう音楽に向き合える時間が今はあるんでしょうね。

大石:あ、そうか、単純に時間があるっていう(笑)。

曽我部:コロナの直前まで、ポップスってめちゃくちゃ短くなったじゃないですか。たぶん歴史上いちばん短くなったのって、やっぱりスピードを上げたい世の中だったからだと思う。今はちょっとリスナーの心に……余裕はないかもしれないけど、長い曲に対峙してくれる隙間がある気はしますね。

曽我部恵一

―コロナ禍以降、運動を日々のルーティーンに入れる人が増えたらしいんですよ。自分も夜に走ってるんですけど、そのときに何を聴いてるかっていったらテクノのDJミックスなんですよね。

大石:ああ、途切れないから。

―そうなんです。1時間、その世界に閉じ込めてくれるような音楽を自分は求めている気がします。かつ、それが体を動かせるダンスミュージックだと一層よくて。

大石:閉じ込められてるんだけど、そのなかで体と心が動いていく。相反するものが共存していく感じは、コロナ禍以降の身体性としてあるのかもしれないですね。

曽我部:そうそう。この間、めちゃくちゃイケイケのダンスミュージックを車で大音量で聴いたんですけど、「やっぱいいな~!」と思っちゃいました(笑)。人間として、動物としての根本に触れてくれるんでしょうね。強烈なダンスミュージックって脳に作用するというより、体の眠ってた部分を目覚めさせる。

大石:その感じ、わかります。コロナになって以降、配信DJを見る機会が増えましたけど、もちろん素晴らしいし面白い、グッとくる部分はあるんだけど、それよりもFORESTLIMIT(幡ヶ谷にあるイベントスペース)に行って自分がDJをしたときのインパクトのほうが勝っていて。お客さんは入れずに、その場にいたのはほかのDJやスタッフを前に配信したんだけど、クラブのサウンドシステムで音楽を聴いたときに、何か動かされる感じがあった。

曽我部:大音量の迫力や低音の響きは、その場でしか感じられないものですよね。こないだ、つくばでサニーデイのライブをして、僕ら的にまあまあの出来だったからちょっと落ち込んでたんです。でも、その場にいたoono yuukiくんから「久々に爆音でロックを聴いたけど最高っすね」と言われて、「あ、そこなんだ」と思った。

やっぱり今は爆音ってことが、演奏そのものよりも響くってことなんでしょうね。お腹がブルンブルンなるくらいキックが出てるとか、きっとそういうことなんだろうな。

曽我部恵一『LIVE IN HEAVEN』を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

大石:鼓膜じゃなくて違うところに響く音っていうか。そういう意味でロックもダンスミュージックなんでしょうね。ギターのギャーンって音を聴いた瞬間、体が動く前に心のどこかが揺れる。それは体は動いてなくてもダンスしてるってことだと思うんです。こういうご時世だから、みんながそういう感覚に飢えている感じはする。

曽我部:(下北沢の)LIVE HAUSとかでパーティーをやってると、外にも音が聴こえてくるじゃないですか。「八月」(曽我部恵一が店長を務める「カレーの店・八月」)を閉めたあととかに、たまたま前を通ったとき、ズンズン鳴ってたら、「あー行きたいな」と思っちゃいますもんね。「踊りたい」とか「走りたい」もそうだと思うんだけど、そういう感覚って生きることを実感できる源なんでしょうね。

曽我部恵一
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リリース情報

曽我部恵一『永久ミント機関』
曽我部恵一
『永久ミント機関』(限定盤12インチ)

2020年10月16日(金)発売
価格:1,870円(税込)
ROSE 253

[SIDE-A]
1. 永久ミント機関

[SIDE-B]
1. MELTING 酩酊 SUMMER

曽我部恵一『戦争反対音頭』
曽我部恵一
『戦争反対音頭』(限定盤7インチ)

2020年10月16日(金)発売
価格:1,100円(税込)
ROSE 254

[SIDE-A]
1. 戦争反対音頭

曽我部恵一『LIVE IN HEAVEN』
曽我部恵一
『LIVE IN HEAVEN』(限定盤LP)

2020年10月16日(金)発売
価格:2,970円(税込)
ROSE 255X

[SIDE-A]
1. 野行性
2. フランシス・ベーコンエッグ
3. 文学
4. mixed night

[SIDE-B]
1. Gravity Garden
2. Big Yellow
3. 花の世紀

曽我部恵一
『LIVE IN HEAVEN』(限定盤CD)

2020年10月16日(金)発売
価格:2,200円(税込)
ROSE 255

1. 野行性
2. フランシス・ベーコンエッグ
3. 文学
4. mixed night
5. Gravity Garden
6. Big Yellow
7. 花の世紀

プロフィール

曽我部恵一
曽我部恵一(そかべ けいいち)

1971年8月26日生まれ。乙女座、AB型。香川県出身。1990年代初頭よりサニーデイ・サービスのヴォーカリスト / ギタリストとして活動を始める。2001年のクリスマス、NY同時多発テロに触発され制作されたシングル『ギター』でソロデビュー。2004年、自主レーベルROSE RECORDSを設立し、インディペンデント / DIYを基軸とした活動を開始する。以後、サニーデイ・サービス / ソロと並行し、形態にとらわれない表現を続ける。2020年8月、『永久ミント機関』『LIVE IN HEAVEN』『戦争反対音頭』を立て続けに発表。10月にはこれら3タイトルを「2020年夏の3部作」と銘打って限定プレスでフィジカルリリースした。

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