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クラムボン・原田郁子&伊藤大助、歌詞に迷った20年目を語る

クラムボン・原田郁子&伊藤大助、歌詞に迷った20年目を語る

インタビュー・テキスト
宇野維正
撮影:永峰拓也

作品に賛否があるのは当然のことだし、いい評判だけを集めていい気になってもしょうがないし、そういうために音楽をやっているわけじゃないので。(伊藤)

―だからこそ、今回の5年振りのオリジナルアルバム『triology』も、これだけ素晴らしい作品、新鮮で漲った作品になっているんでしょうね。

伊藤:まぁ、5年という間隔は長いですよね(笑)。前に、『Musical』(2007年)をリリースした時に、知り合いから電話があったんですよ。「今、目の前に昔のクラムボンが好きで、久々に今回のアルバムを聴いた人が感動して泣いてるんだけど、ちょっと電話代わってくれない?」って。要は、昔のクラムボンの作品は好きだったけど、セッション中心で曲を作るようになってから興味がなくなって一度離れたと。でも、久々に新作を聴いてみたらそれがとてもよくて、一度離れていたことを謝りたいと(笑)。正直なところ、困りましたね(笑)。

伊藤大助

―(笑)。それで伊藤さんは何とおっしゃったんですか?

伊藤:「困った」というのは、その方が僕に謝ることなんか何ひとつないのに、という意味です。言いたいことは大体わかるけども、むしろ、素直に向き合ってくれてありがとう、とお礼を言わせてもらいたいくらいで。好きな時は好きと思って聴いてくれれば嬉しいし、そうじゃない時は無理しなくてもいいし、こちらとしては「これからもよろしくお願いします」としか言えないですから。だから、こうして今回みたいに5年振りにアルバムを出すことで、新しい作品と共に「元気にやってます」ということを示せればいいかなって。作品に賛否があるのは当然のことだし、いい評判だけを集めていい気になってもしょうがないし、そういうために音楽をやっているわけじゃないので。

原田:こうしてアルバムを作らせてもらえる場があること、「お前らもう少しやってみろ」って言ってもらえることって、今の時代、簡単なことではないから。感謝の気持ちしかないですね。うまく言える自信がないんですけど……私たちってプレイヤーでもあるけど、リスナーでもあるんですよね。

―「リスナー」というのは、自分たちの音楽のリスナーってことですか?

原田:音楽自体の。だから、三人の間にも見えないけど音楽というスペースがあって、聴いてくれる人との間にもあって。デビューしたばかりの頃は、本当に未熟で、準備もできてなかったから、自分の声とか演奏に幻滅するばかりで。自分たちの畑で作った野菜を美味しいと思えないって、一番マズイだろうって。そこが循環してくるまでに、まず誰よりも自分たちが「いいね」っていうところまで持っていくのに、やっぱり時間がかかった。そういう、半分リスナー的発想で生まれたのが、『Re-clammbon』(2002年、2009年にリリースした、セルフカバーアルバム)だったり、カバーアルバムだったりするのかな。

―なるほど。

原田:その一方で、いろんな場所でライブをしていく中で、「どんなところであっても三人が鳴らせばクラムボンの音になる」という経験を積んでいくというか。今年は節目ということもあって、オリジナルアルバムを出そうという話は、2013年のツアーの頃に話しました。

―前作のリリースからの5年間も、決して動きが止まっていたわけではなく、いろんな経験や活動を積み重ねてきていたわけですもんね。制作はいつから入ったんですか?

原田:実際にミトくんから新曲のデモが届いて、曲作りが始まったのは、去年の1月からなんですけど。今回は……歌詞にものすごく苦しみました。

大ちゃんに「たくさんの人に届けようとする曲じゃなくて、誰か1人にとって特別な歌があってもいいと思うんだよね」って言ってもらった。(原田)

―それだけ書きたいものが溜まっていたということですか?

原田:うーん……とにかくミトくんが作ってきた曲が今まで以上に明確で、鋭くて、音数も展開も多かった。それに引き換え、自分の内側には漠然ともやもやした状態が広がってる。何度も何度もデモを聴いていたら、本当に一文字も出てこなくなってしまったんです。あまりに時間がかかってしまって、「完成してなくていいから、とにかく見せて」って言われて、断片だけ持っていくんですけど、自分がいいと思えてないから、彼がいいと言うわけがない。それで細かく指摘されてまた持ち帰って、という作業を徹底的にやりました。

―その作業が、今回はこれまで以上に厳しかった?

原田:そうですね。最後の最後に、一番難しい曲を作ってた時に、どうしようもなくなって、大ちゃんに「取材させてもらってもいいですか?」って呼び出して話を聞いたんです。大ちゃんの心情を歌に入れられないかなと思って、個人的なことを話してもらって。私はそれをパソコンに打ち込んでいくんですけど、喫茶店で、ぼろぼろ号泣して(笑)。

―え? そんな壮絶な話だったんですか?

伊藤:いやいや、全然(笑)。ただの身の上話なんですけど。たくさん話したんですけど、それがあまり結果的には作品に反映されていないという。そこはなかなか複雑な気持ちになりましたが(笑)。

原田:すみません(笑)。あまりにも生々しかったので。でも、そこから生まれた曲はちゃんとあって、今回は入ってないんですけど、いつか発表できたらと思ってます。そう、その時、大ちゃんに「たくさんの人に届けようとする曲じゃなくて、誰か1人にとって特別な歌があってもいいと思うんだよね」って言ってもらった。そこで、できたのは“バタフライ”という曲。友人を亡くした時のこと、ずっと引っかかっていたことを、膨らませて書きました。

伊藤:これまであまりメンバーの間でパーソナルな話をしてこなかったからこういう言い方をするのは初めてだったけど、「原田郁子という人間が、今、個人的に歌いたいと思う歌を聴いてみたい」って話はしましたね。

左から:原田郁子、伊藤大助

―それが「20年目にして」と思うと、なかなか感慨深いものがありますね。

伊藤:でも、きっとこれからも三人で飲みに行ったりすることはないと思います(笑)。

―三人が一緒にやるようになった理由も音楽だし、三人が今も一緒にやっている理由も音楽であると。それが20年間まったく変わらないというのが、クラムボンというバンドなんでしょうね。

原田:どうにかこうにかアルバムができあがって、世に出て、ようやく私たちも、一歩踏み出せるような気がしています。

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リリース情報

クラムボン『triology』初回限定盤(CD+DVD)
クラムボン
『triology』初回限定盤(CD+DVD)

2015年3月25日(水)発売
価格:4,104円(税込)
COZP-1035/6

[CD]
1. Lightly!
2. アジテーター
3. the 大丈夫
4. Rough & Laugh
5. agua
6. noir
7. Scene 3
8. はなさくいろは -bon bori ver.-
9. バタフライ
10. yet -triology ver.-
11. Re-ある鼓動
12. Lightly...
[DVD]
『2015.02.11〝クラムボン 祝!結成20周年スペシャルフリーライブat 代々木公園〟』
1. Re-ある鼓動
2. シカゴ
3. パンと蜜をめしあがれ
4. 茜色の夕日
5. 波よせて
6. アジテーター
7. yet
8.サラウンド

クラムボン『triology』通常盤(CD)
クラムボン
『triology』通常盤(CD)

2015年3月25日(水)発売
価格:3,240円(税込)
COCP-39059

1. Lightly!
2. アジテーター
3. the 大丈夫
4. Rough & Laugh
5. agua
6. noir
7. Scene 3
8. はなさくいろは -bon bori ver.-
9. バタフライ
10. yet -triology ver.-
11. Re-ある鼓動
12. Lightly...

クラムボン『triology』(Blu-ray audio)
クラムボン
『triology』(Blu-ray audio)

2015年3月25日(水)発売
価格:4,104円(税込)
COXP-1127

1. Lightly!
2. アジテーター
3. the 大丈夫
4. Rough & Laugh
5. agua
6. noir
7. Scene 3
8. はなさくいろは -bon bori ver.-
9. バタフライ
10. yet -triology ver.-
11. Re-ある鼓動
12. Lightly...

クラムボン『triology』(LP)
クラムボン
『triology』(LP)

2015年3月25日(水)発売
価格:4,104円(税込)
COJA-9292

1. Lightly!
2. アジテーター
3. the 大丈夫
4. Rough & Laugh
5. agua
6. noir
7. Scene 3
8. はなさくいろは -bon bori ver.-
9. バタフライ
10. yet -triology ver.-
11. Re-ある鼓動
12. Lightly...

イベント情報

『clammbon 20th Anniversary「tour triology」』

2015年6月11日(木)
会場:宮城県 仙台 Rensa

2015年6月12日(金)
会場:新潟県 LOTS

2015年6月19日(金)
会場:愛知県 名古屋市公会堂

2015年6月21日(日)
会場:石川県 金沢 EIGHT HALL

2015年6月26日(金)
会場:大阪府 オリックス劇場

2015年7月2日(木)
会場:福岡県 福岡市民会館

2015年7月4日(土)
会場:香川県 高松 オリーブホール

2015年7月11日(土)
会場:北海道 札幌 PENNY LANE 24

2015年8月1日(土)
会場:広島県 広島CLUB QUATTRO

2015年11月6日(金)
会場:東京都 九段下 日本武道館

プロフィール

クラムボン

1993年、福岡出身の原田郁子(Vo,Pf)と東京で育ったミト(Ba)、そして札幌出身の伊藤大助(Dr)の三人が、同じ専門学校で出会う。95年にクラムボンを結成。99年、シングル『はなれ ばなれ』でメジャーデビュー。当初より、ライブバンドとして高い評価を得ながら、ライブやレコーディングなどにおいて他のアーティストとのコラボレーションや楽曲提供、プロデュースなど多岐に渡る活動を続けてきている。2015年3月25日には、8枚目のアルバム『2010』以来、5年ぶりとなるオリジナルアルバム『triology』をリリース。前作から今日に至るまで、各種リリースや、会場募集型の『ドコガイイデスカツアー』、両国国技館、よみうりランド2Daysといった大規模なワンマン公演、全国でのフェス出演など、精力的な活動を継続。

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