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イベント趣旨も、儲けもない。それでも9年続く沖縄フェスの実態

イベント趣旨も、儲けもない。それでも9年続く沖縄フェスの実態

『Sakurazaka ASYLUM 2016』
インタビュー・テキスト
麦倉正樹
撮影:永峰拓也

全国各地で音楽フェスティバルが行われるようになって久しい昨今。その中にあってひときわ異彩を放つフェスがある。毎年、沖縄県那覇市桜坂エリアで開催されている『Sakurazaka ASYLUM』だ。今年も2月13日、14日の2日間にわたって開催されるそのイベントは、映画館やホールを含む複合施設・桜坂劇場を中心に、桜坂界隈のライブハウスや飲食店、果ては公園やストリートまでが舞台となり、「小さい街フェス」とも呼ばれている。「街フェス」と言っても、マルチーズロックやelement of the momentsといった地元沖縄のバンドだけでなく、eastern youthやthe LOW-ATUS(BRAHMANのTOSHI-LOWとthe HIATUSの細美武士のユニット)、松崎ナオ、小南泰葉、MOROHAといった個性的なアーティストが全国から集結。さらには、アートイベントやワークショップ、飲食店や雑貨屋が出店する「マルシェ」など、数々のイベントが行われる複合音楽フェスである。

「ASYLUM」シリーズとして、福島市やいわき市、今年からは越谷市などでも開催が決定しているこのフェスティバルは、どのような思想のもとに生まれ、発展してきたのだろうか。桜坂劇場のプロデューサーである野田隆司と、フェス立ち上げ時よりこのフェスの中心的な役割を担っているシンガーソングライター・タテタカコの二人に話を聞いた。

このフェスを「発展させていこう」という発想はないんですよ。(野田)

―そもそも『Sakurazaka ASYLUM』は、どんなふうに始まったフェスなのでしょうか?

野田:僕がプロデューサーを担当している桜坂劇場というのは、基本的には映画館なんですけど、カフェとかショップも併設していて、ライブイベントやワークショップもできる場所なんです。沖縄のインディペンデントな文化を発信していく場所として、2005年からやっています。そこでタテ(タカコ)さんにずっとソロライブをしてもらっていたんですけど、2007年にタテさんのほうから、「eastern youthと一緒に何かやれないか?」という話をいただいて。2007年の秋に『荒野のアサイラム』というカルチャーコンプレックスイベントを開催したのが始まりです。

左から:野田隆司、タテタカコ
左から:野田隆司、タテタカコ

タテ:そのときは、それを今後フェスとしてやっていくとか、全然考えてなかったんですけどね(笑)。

野田:うん、何も考えてなかった(笑)。

タテ:ただ、そこから野田さんがいろんな方と繋がっていって……翌年の2008年から、『Sakurazaka ASYLUM』という形でやるようになったんですよね。

―そこから毎年規模が大きくなっていったのでしょうか?

野田:いや、そうでもないというか。このフェスを「発展させていこう」という発想は常にないんですよ。ただ、タテさんのチームと僕ら桜坂のチームが、その1年のあいだにどれだけの人と関係性を広げられたかを年に一度お互いに持ち寄って、一緒に何かをやるということを繰り返していたら、いつの間にかこういう規模になっていたという(笑)。

―あくまでも、人との繋がりありきのフェスであると。

タテ:そうなんですよね。だから、いわゆる「街おこし」みたいなものでも、もちろんビジネスでもなく、全国各地で自分が巡り合った方たちのライブをこの場所で聴きたいという、本当に単純な発想なんです。企画ありきというよりも、人ありきというか。そういうイベントになっていると思います。

野田:だから、アーティストのブッキングにしても、最近は音楽業界の方々からの売り込みがあったりするんですけど、自分たちとは関わりのないアーティストに出てもらうことは、なんとなく避けているんですよね。

左から:野田隆司、タテタカコ

タテ:人との繋がりという意味では、今や会場中で飾る旗やオーナメントは、全部桜坂界隈でお店をやっている方々とか、地元のみなさんが手作りでやってくださっているんですよ。だから、そのフェスが作られていく過程とか、フェスが終わって行く過程を、すごくリアルに感じられるんですよね。スタッフとの距離も感じないからこそ、いつまでも関わらせていただきたいと思うんです。

―いわゆる「街おこし」ではないとはいえ、やはり桜坂界隈ならではの場所の魅力もあるのでしょうか?

タテ:わしが桜坂劇場でライブをやらせてもらうようになってから10年ぐらい経つんですけど、最初の頃は、ただライブをして、ホテルに泊まって、次の日地元に帰る、みたいな感じだったんです。でも、いつだったか、野田さんがライブの前日に照明や音響の方々も含めたスタッフのみなさんと親睦を深める機会を作ってくれたんですよね。そのときから、桜坂のみなさんとはただライブの瞬間だけを一緒に過ごす関係性じゃなくて、一緒にライブを作っている「チーム」という感覚を抱くようになりました。それまでは沖縄に行っても、観光客と同じような立場だったのが、お世話になるスタッフとか、周りのお店の方々とか、友達がどんどん増えていって。そうしているうちに桜坂という街に馴染んでしまったところはありますね。

野田:タテさんのいろんな人との関わり方を見ていると、桜坂云々という話ではないような気もするんですよね。タテさんが全国から連れてくれるアーティストの方々も、どんどん地元の人たちと関係性を作ってくれて、輪を広げてくれるんです。だから、桜坂という場所自体に吸引力があるというよりも、タテさんとタテさんが連れてきてくれる人たちの魅力が大きいのかなと思います。もちろん、地元の人たちの魅力もあると思いますけど。

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イベント情報

『Sakurazaka ASYLUM 2016』

2016年2月13日(土)、2月14日(日)
会場:沖縄県 那覇 桜坂周辺会場
出演:
アイリッシュ音楽団nina
浅草ジンタ
足田メロウ
アライヨウコ
ARAGAKI REI
新良幸人withサトウユウ子
ALKDO/アルコド(TURTLE ISLAND acoustic)
eastern youth
石原岳
伊藤せい子
イヌガヨ
内郷げんこつ会
MCウクダダとMC i know
element of the moment
遠藤ミチロウ
Os ネコジャラシス
岡山健二

乙黒信
Orkestar de VICCOS
caino
Kazuya Matsuzaki
勝井祐二
Kamon
ぎすじみち
キセル
木村華子
ギャーギャーズ
ぐりもじゃ・サスケ
コサック魔夜
小西博子
小南泰葉
SAKISHIMA meeting(新良幸人×下地イサム)
SAVA
the you
the LOW-ATUS(細美武士、TOSHI-LOW)
地獄車
羊歯明神(遠藤ミチロウ、山本久土、石塚俊明)
勢理客オーケストラ
下地イサム
奢る舞けん茜
Dugong Dugon
jujumo
Shota
しょーしょー
SHOCKING桃色
SLANG
∞Z
sonoray
高江フラ
高良結香
タテタカコ
ぢゃん
tea
tidanomiyuki
Tulegur
TOSHI-LOW
トラダフジコ
ナカハジメ
中村いぶき
仲村颯悟
ナマケモノ
南部マンゴーパーティーズ
2源色
HA~HA
ハシケン
BUTTERCHEEZE ROLL
8bit
かおり
HARAHELLS
HITO SAJI
ヒカリトカゲ
viridian
fasun
funnynoise
Predawn
ヘアンナケンゴ
外間建次
真喜屋志保
松崎ナオ
マルチーズロック
ミーワムーラ
三ヶ田圭三
むぎ(猫)
MOROHA
やちむん刺激茄子
山田真未
山本久土
Yugen
YUMIMPO*
ヨシムラタカシ
リコーダーズ
RITTO
料金:
1日券 前売4,000円 当日4,500円
2日通し券 前売7,000円

プロフィール

タテタカコ
タテタカコ

ピアノと歌だけで様々な音楽ジャンルを内包した表現をする異色のシンガーソングライター。全国を渡り歩きながら年間100本を超えるライブを行うかたわら、映画、CM等への楽曲提供も数多くしている。2004年、カンヌ国際映画祭受賞作品『誰も知らない』(是枝裕和監督)に楽曲“宝石”を提供し注目を集める。同年1stアルバム『そら』でデビュー。以降、全国各地で精力的にライブを行う。日本国内にとどまらず海外でのライブ活動も積極的に行っており、これまでに、カンボジア、台湾、フランスでライブを行っている。東日本大震災以降、人の繋がりの大切さを再確認し、自身も企画、運営に携わっている沖縄の街フェス『ASYLUM(アサイラム)』を福島県で開催することを決意。2012年3月10日、11日に福島県で音楽イベント『ASYLUM2012 in Fukushima』を開催。タテタカコの呼びかけで多くの人気アーティストが参加し大盛況の結果となった。現在も東日本大震災の被災地に住む人々との繋がりを大切にし、被災地での音楽活動を頻繁に行っている。国立音楽大学音楽教育学科卒。長野県飯田市出身・在住。

野田隆司(のだ りゅうじ)

長崎県佐世保市出身。ハーベストファーム代表。沖縄屈指のカルチャー発信スポット「桜坂劇場」のプロデューサー。編集・ライティング業務や、高良結香・小林真樹子のマネジメントも行う。

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