特集 PR

増田セバスチャンが「カワイイ」で取り戻す、大人が忘却したもの

増田セバスチャンが「カワイイ」で取り戻す、大人が忘却したもの

インタビュー・テキスト
阿部美香
撮影:永峰拓也

きゃりーぱみゅぱみゅのMVで世界的に注目され、ファッション、ポップアートの分野で原宿をメインフィールドとした「カワイイカルチャー」を牽引してきた増田セバスチャンが初監督となる映画を手がけた。その作品とは、1979年の実写人形アニメーション映画『くるみ割り人形』のリクリエイト作品だ。当時のフィルムをひとコマずつデジタルスキャンして新たな演出・脚色によるアニメーションを加え、35年の時を経て3D作品として蘇った今作には、増田セバスチャンが自身のクリエイティブスピリットを遺憾なく投入。まさに「カワイイカルチャー」の原点ともいえるファンタジックな魅力を放っている。その創作の秘密から、増田セバスチャンが追求し続ける「カワイイ」の可能性まで訊いた。

「カワイイ」をはじめとした日本のポップカルチャーのルーツを、世の中はごっそり忘れている。

―増田さんのアートディレクターとしての作品といえば、きゃりーぱみゅぱみゅの初期のMVや美術演出などでおなじみですが、映画監督は初挑戦ですね。その作品が、35年前の実写人形アニメーションのリクリエイト映画『くるみ割り人形』です。

増田:実は、子どもの頃にこの作品を見ているんですよね。僕は千葉県の松戸市出身なんですが、当時松戸には、サンリオ映画を専門に上映する「松戸サンリオ劇場」がありました。そこで『ユニコ』(手塚治虫原作の女子児童向け漫画作品、1981年に映画化)や『シリウスの伝説』(1981年公開)といったアニメーション映画をよく見ていたんです。その中の1本が『くるみ割り人形』でした。当時の僕はけっこうませたガキンチョだったので、いかにも子ども向けの映画はあまり好きじゃなかった。でも『くるみ割り人形』だけは「これは子どもだましじゃない!」と感じ、大人になってもずっと心に引っかかっていました。

増田セバスチャン
増田セバスチャン

―原作映画を30年以上も前にご覧になっていたんですね。

増田:そうなんです。なので、監督のオファーをいただいたときは「え? 僕があの映画を?」とビックリして、かなりのプレッシャーを感じました(苦笑)。とはいえ、内容はうろ覚えでしたから、まずは当時の脚本を読ませていただいたんです。するとこれまた偶然にも、僕が10代の頃に強烈に影響を受けた寺山修司が最初の脚本作りに参加していた。寺山の台詞はちょっとグロテスクだったので、サンリオの社長である辻信太郎さんが脚本を書き直したという経緯があったのですが、寺山修司の毒が何かしら映画にも残っていたからこそ、他の映画とは違うものを感じたんだと思うんですよね。そんなところにも運命的なものを感じて「他の人に監督されるのはイヤだ!」と、お引き受けしました。

『くるみ割り人形』 ©1979,2014 SANRIO CO.,LTD.TOKYO,JAPAN
『くるみ割り人形』 ©1979,2014 SANRIO CO.,LTD.TOKYO,JAPAN

―はじめは、かなりのプレッシャーを感じたとおっしゃいましたが、そこから増田さんはどのように作品に向き合おうと思われたのですか?

増田:今、「カワイイ」を筆頭に世界中に普及している日本のポップカルチャーには、戦後の少女文化から始まるルーツが存在する。つまり、「カワイイ」の礎となった大先輩方の軌跡の1つに、この『くるみ割り人形』があるんです。でも世の中は、そういう過程をごっそり忘れたまま「クールジャパン!」と盛り上がっていますよね? 僕はそれがものすごくイヤでした。この映画で昔のフィルムを使うことにしたのも、先輩方のクリエイションをちゃんと現代に引き継いだ上で送り出したかったからなんです。

―子どもの頃に『くるみ割り人形』を見た体験を受け継ごうとしたんですね。

増田:僕自身も、35年前にこの映画から得た「引っかかり」を心に残したままクリエイターになった。その「引っかかり」こそが、『くるみ割り人形』が放つメッセージの本質だし、未来に受け継ぐべきものだと思ったんです。そこでこの映画も「過去から未来への接続」というコンセプトを掲げて、制作に取りかかりました。

Page 1
次へ

作品情報

『くるみ割り人形』

2014年11月29日(土)から全国ロードショー
監督:増田セバスチャン
3D監督:三田邦彦
テーマ曲:きゃりーぱみゅぱみゅ“おやすみ -extended mix-”ワーナーミュージック・ジャパン(作詞・作曲・編曲:中田ヤスタカ(CAPSULE))
声の出演:
有村架純
松坂桃李
藤井隆
大野拓朗
安蘭けい
吉田鋼太郎
板野友美(友情出演)
由紀さおり(特別出演)
広末涼子
市村正親
配給:アスミック・エース

プロフィール

増田セバスチャン(ますだせばすちゃん)

アートディレクター/アーティスト。1970年生まれ。演劇・現代美術の世界で活動した後、1995年に"Sensational Kawaii"がコンセプトのショップ「6%DOKIDOKI」を原宿にオープン。原宿Kawaii文化をコンテクストとした活動を行っている。2009年より原宿文化を世界に発信するワールドツアー『Harajuku"Kawaii"Experience』を開催。2011年きゃりーぱみゅぱみゅ“PONPONPON”MVの美術で世界的に注目され、2013年には原宿のビル「CUTE CUBE」の屋上モニュメント『Colorful Rebellion -OCTOPUS-』製作、六本木ヒルズ『天空のクリスマス2013』のクリスマスツリー『Melty go round TREE』を手がける。2014年に初の個展『Colorful Rebellion -Seventh Nightmare-』をニューヨークで開催。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

Got a minute ? 動画これだけは

ハリウッドザコシショウ“ゴキブリ男(Video Edit)”

ハリウッドザコシショウの歌手デビュー曲“ゴキブリ男”のPV。石野卓球が作詞・作曲・プロデュースを手がけたと知って納得。キワモノに聴こえない仕上がりには流石の一言です。コーラスにはピエール瀧も参加しており、電気グルーヴ仕様にも俄然興味が湧く。なお、卓球は「こう言っちゃなんだけど、ゴキブリの歌が売れるわけねえだろ!」とコメント。(山元)