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2020年のMETAFIVE評。その足跡と『環境と心理』で迎えた新局面

2020年のMETAFIVE評。その足跡と『環境と心理』で迎えた新局面

METAFIVE『環境と心理』
編集
山元翔一(CINRA.NET編集部)

高橋幸宏、TOWA TEI、砂原良徳、小山田圭吾、ゴンドウトモヒコ、LEO今井によるスーパーグループ・METAFIVEが、本来『東京五輪』が開催されているはずだった2020年の夏に再始動した。新型コロナウイルスに惑う世界において、このことはどのような意味を持つだろうか。

黄昏の空に東京スカイツリーのシルエット、グラデーションする薄紫の空をくり抜くように「META」の4文字――METAFIVEの約4年ぶりの再始動に際して届けられた新曲『環境と心理』では、滲み感のある電子音と小山田圭吾、LEO今井、高橋幸宏と歌い継がれるメロウなメロディによって、景色(≒環境)の変化と「なんとなく」移り変わる心模様が重ね合わされて表現されている。この楽曲がいつ作られたかは知るところではないが、コロナ禍によってSFの斜め上をいってしまった2020年を生きる私たちのリアルを射抜いているような気がする。

この比類なきバンドは、いかにしてその「肉体」を手にし、今また新たな局面を迎えようとしているのか。その真に得難いサウンドを、日本のポップミュージックを支えてきた6人の化学反応によって形作られる実態を、2020年に新たに位置付けるべく、METAFIVEのみならず各メンバーへの取材歴のあるライターの村尾泰郎と金子厚武の両名に筆を執ってもらった。

「METAFIVEの略歴。日本のポップミュージックを支えてきた6人が集い、『バンド』という肉体を手にするまで」テキスト:村尾泰郎

高橋幸宏、TOWA TEI、砂原良徳、小山田圭吾、ゴンドウトモヒコ、LEO今井の6人によって結成されたMETAFIVE。それぞれ独自の音楽性を持つ6人だが、日本のテクノの歴史がこのバンドに集約されているとも言えるかもしれない。というのも、彼らを結びつけるキーワードのひとつとなるのがYMO(Yellow Magic Orchestra)だからだ。

言うまでもなく高橋はYMOのドラマーであり、1960年代に生まれた4人、テイ、砂原、小山田、ゴンドウは、10代の頃にYMOから大きな影響を受けた。そして、テクノポップがロックやダンスミュージック、エレクトロニカなど様々な音楽へと広がっていくなかで、その進化を自分たちのサウンドに反映させてきた。

METAFIVE(左から:高橋幸宏、LEO今井、砂原良徳、TOWA TEI、小山田圭吾、ゴンドウトモヒコ)<br>それぞれが日本の音楽シーンに特別で、独特な存在を築いてきたレジェンドの集合体である、まさに夢のバンド。2016年1月にオリジナルアルバム『META』をリリース。同年8月には、アルバム発売直後に行われたEXシアター六本木でのライブを全曲完全映像化した作品『METALIVE』を、11月にはオリジナル曲5曲を収録したミニアルバム『METAHALF』を発売。2020年7月、約4年ぶりとなる新曲『環境と心理』をリリースした。
METAFIVE(左から:高橋幸宏、LEO今井、砂原良徳、TOWA TEI、小山田圭吾、ゴンドウトモヒコ)
それぞれが日本の音楽シーンに特別で、独特な存在を築いてきたレジェンドの集合体である、まさに夢のバンド。2016年1月にオリジナルアルバム『META』をリリース。同年8月には、アルバム発売直後に行われたEXシアター六本木でのライブを全曲完全映像化した作品『METALIVE』を、11月にはオリジナル曲5曲を収録したミニアルバム『METAHALF』を発売。2020年7月、約4年ぶりとなる新曲『環境と心理』をリリースした。
METAFIVE“環境と心理”を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

テイは学生時代、坂本龍一のラジオ番組に宅録音源を投稿。やがてニューヨークに渡り、現地で知り合った仲間たちとハウスユニット、Deee-Liteを結成して1990年にメジャーデビューする。1994年に活動拠点を日本に移してソロデビューしてからは、DJ / クラブカルチャーを通過したモダンなセンスでダンスミュージックとしてのテクノを受け継いだ(関連記事:インナーワールドの探求 TOWA TEIインタビュー)。

TOWA TEI“TECHNOVA”(1994年)を聴く。同曲はA Tribe Called Quest“Find a Way”(1997年)のサンプリングネタとしても知られる(Apple Musicはこちら

一方、砂原はYMOに影響を受けてシンセサイザーを弾きはじめ、1991年に電気グルーヴに加入したことで注目を集める。現在はソロで活動しているが、趣味でYMOの曲をオリジナルそっくりにコピーした音源を制作するなど、YMOやテクノに対するマニアックな知識と技術の持ち主。再始動したYMOと共演したこともある(関連記事:音楽は人を変えられる 砂原良徳インタビュー)。

砂原良徳『TAKE OFF AND LANDING』(1998年)を聴く(Apple Musicはこちら

また、Cornelius名義で活躍する小山田は、高橋幸宏と細野晴臣が結成したSKETCH SHOWや、再始動後のYMOにギタリストとして参加していて、YMOのメンバーが一目置く存在。海外でも高い評価を得ているところはYMOに通じるところもある(関連記事:Corneliusが突然変異したとき 音楽家として迎えた転換点を語る)。

そして、2003年にAnonymassとしてデビューしたゴンドウは、高橋幸宏の様々な作品に参加してきた高橋の右腕的な存在。またプロデューサー / アレンジャーとして、くるり、UA、LOVE PSYCHEDELICOなど様々なアーティストの作品を手がけてきた。

2016年、ゴンドウは自身のソロ名義で『Euphobia EP』をリリースしている

そんなベテラン4人に混ざって、最年少のLEOは中学生のときに母親から教えてもらってYMOを聴き衝撃を受けたそうだが、2007年にソロデビューして以来、そのサウンドにはニューウェイブやポストパンクからの影響を感じさせる(関連記事:LEO今井を形作るスウェーデン音楽。体ではなく頭の中で踊る音)。

LEO今井は、2010年に向井秀徳(NUMBER GIRL、ZAZEN BOYS)とKimonosを結成している

オリジネイターの高橋を中心に、世代が異なるYMOチルドレンが集まったMETAFIVE。結成のきっかけになったのは、2014年1月17日に開催されたスペシャルライブ『TECHNO RECITAL』で高橋が5人を呼んで共演したことだった。テイ、小山田、砂原は、高橋のトリビュートアルバム『RED DIAMOND~Tribute to Yukihiro Takahashi』(2012年)に「O/S/T」名義で参加していて、そこにゴンドウとLEOを加えてYMOの曲をカバーする、というのが狙いだった。

その際、高橋はかつて細野晴臣がテクノのことを「メタ・ポップ」と言っていたこと、そして、変身 / 変化を意味する「メタモルフォーゼ」という言葉から、バンド名をMETAFIVEと命名。当初は「高橋幸宏&METAFIVE」と名乗っていた(関連記事:高橋幸宏&小山田圭吾が新バンド結成で見つめ直す、バンド論の今)。

『TECHNO RECITAL』で予想以上の手応えを感じた高橋は、その後、同じメンツでフェスなどでも共演。そんななか、Corneliusが手がけたサントラ『攻殻機動隊ARISE border:4 Ghost Stands Alone』(2014年)の収録曲“Split Spirit”を6人で制作したことが、本格的にバンドとして活動するきっかけになった。そして、2016年にバンド名を「METAFIVE」に改めて1stアルバム『META』を発表する。

高橋幸宏&METAFIVE“Split Spirit”を聴く(Apple Musicはこちら

そこで興味深いのは、高橋はMETAFIVEを結成する直前、2013年に「In Phase」というバンドを結成していることだ。メンバーは高橋のソロアルバム『Life A New』(2013年)に参加したジェームス・イハ、高桑圭、堀江博久、ゴンドウトモヒコに、ギタリストの鈴木俊治を加えた6人。In Phaseは高橋が影響を受けた1960~70年代の英米のフォークやロックの魅力を追求するバンドで、高橋のミュージシャンとしての原点を再確認するプロジェクトだった。

関連記事:高橋幸宏インタビュー 原点回帰のフリをして未来へ(記事を読む

一方、METAFIVEはきっかけこそYMOだが、バンドの目的は原点回帰ではない。そこにはバンドメンバーの関係性の違いが現れている。In Phaseは高橋を中心にしたバンドであり、高橋のアイデアをバンドが肉付けして膨らませた。メンバーにセッションミュージシャンが多いのも特徴だ。一方、ソロで活動するアーティストが集まったMETAFIVEのメンバーの関係性は対等だ。それはバンドというコンセプトで繰り広げられるコラボレーションとも言えるかもしれない。だからこそ、そこには6人の個性が火花を散らす面白さがある(関連記事:METAFIVEインタビュー 幸宏、小山田らの比類なき最高峰バンド)。

METAFIVE『METALIVE』を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

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リリース情報

METAFIVE『環境と心理』
METAFIVE
『環境と心理』

2020年7月24日(金)配信

プロフィール

METAFIVE
METAFIVE(めたふぁいぶ)

高橋幸宏×小山田圭吾×砂原良徳×TOWA TEI×ゴンドウトモヒコ×LEO今井。それぞれが日本の音楽シーンに特別で、独特な存在を築いてきたレジェンドの集合体である、まさに夢のバンド。2014年1月に六本木EX THEATERのオープニング企画として行われた、「高橋幸宏&METAFIVE」としての一夜限りのスーパー企画として結成され、その後不定期に活動を続行。2016年1月にオリジナルアルバム『META』をリリース。同年8月には、アルバム発売直後に行われたEXシアター六本木でのライヴを全曲完全映像化した作品『METALIVE』を、11月にはオリジナル曲5曲を収録したミニアルバム『METAHALF』を発売。2020年7月、約4年ぶりとなる新曲『環境と心理』をリリースした。

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